演劇

水素74% 『荒野の家』

『荒野の家』は引きこもりの息子を抱えた父と母と、頻繁に実家に逃げてくる娘の4人家族の物語である。 息子は小学生のときに母との間に起きたとある事件から甘やかされて育った結果、30歳になっても引きこもりである。母は今までの子育てを反省し息子を甘や…

悪魔のしるし「注文の夥しい料理店についての簡潔な報告」

以下のレビューは、下流の観客からの視点に基いている。中流、上流の観客からはこれとは全く異なる感想を持っているだろうが、その観客になることは出来ないし、そのため気持ちを考えることも難しい。 悪魔のしるし「注文の夥しい料理店についての簡潔な報告…

Theater ZOU-NO-HANA「象はすべてを忘れない」

今はすっかりあの場所に馴染んだように見える赤レンガ倉庫だけど、横浜で生まれ育ってきた身からすればすごく違和感が残っている。中に入っているお店も魅力的ではないし、イマイチ何のためにあるのかよくわかっていない。おそらく、赤レンガがないと横浜か…

サンプル「永い遠足」その1

始まり方が魅力的な文章はそれだけで読まれる可能性が高いということは文章を書く人にとっては当たり前のものとして持っているもので(そしてこの文章がいかに凡用な始まりであるかは言うまでもないが)、だからこそ文章を書き始められないという問題が発生…

東葛スポーツ「ツール・ド・フランス」

それまでにもどんどん上げ続けるDJというのはいたと思うのだけれど、それでも2 many DJ'sの登場というのは個人的には衝撃だった。例えば、今youtubeで観ることが出来るReading Festivalの2011年の動画では、Chemical Brothers 'Hey Boy, Hey Girl (2ManyDJs …

ラビア・ムルエ「雲に乗って」

舞台上には、たくさんのCDケースや様々なものが置かれた机とスクリーンが置かれている。観客席が暗くなり、作品が始まると、一人の男がその机に向かって歩いてきて、机の前に置かれている椅子に座る。その歩き方を見るに、右半身に明らかに障害を抱えている…

鳥公園「甘露」

「やりたいこととかないの?」という声が地下から聞こえ、最初から意表を突いた形で劇が始まる。そして、終わった頃には時間と空間がネジ曲がったような感覚になっていた。この不思議な感覚はどうやって生まれただろうか。 まず簡単に今回の作品のステージの…

マームとジプシー「COCOON」

今日マチ子が、戦時中の沖縄の女学生について描いた「COCOON」を原作にした作品。原作との比較で言うと、原作では少ししかなかった看護隊に入る前の学校でのエピソードがかなり大きく扱われ、看護隊に入る前、看護隊での活動、看護隊解散後といった3部構成に…

今年上半期のマイ・ベスト

■音楽編 非常にベタなランキングです。 が、Kanye Westが入ってないなぁとか、Disclosureがないとかあります。・3位:Daft Punk「Random Access Memories」 ・2位:Rhye 「Woman」 ・1位:Justin Timberlake 「20/20 Experience」 ■映画 なんか今年は不発感…

ままごと「朝がある 弾き語りツアー」

「演劇の面白さは本当はないものが見えること」と最初に大石将弘が話す。演劇の魅力を諭すように始まるこの劇は大きく分けて2つのパートがある。そのパートについて話す前に、この劇の内容について話しておきたい。 2013年7月9日月曜日。東京から離れたA県K…

岡崎藝術座「隣人ジミーの不在」その1

2012年後半、僕には様々な新しく幸福な出会いがあった。そしてその年末に、来年は今までいくつかの点で敬遠していた「演劇」を観てみようと思った。敬遠していた理由は大きく分ければ、3つあった。ひとつ目は今最も興味があるのが映画で、その時間を削られた…