水素74% 『荒野の家』

『荒野の家』は引きこもりの息子を抱えた父と母と、頻繁に実家に逃げてくる娘の4人家族の物語である。 息子は小学生のときに母との間に起きたとある事件から甘やかされて育った結果、30歳になっても引きこもりである。母は今までの子育てを反省し息子を甘や…

Blur 武道館公演

この2014年に必ず観るべきライブはなにか。3月に来日するJkae Buggやサマーソニックでの来日が決まっているArctic Monkeysなどがおそらくそういった問いの答えになるのだろう。別にThe Rolling Stonesのライブに行ったっていいけど、そのお金でフジロック行…

ソフィア・コッポラ「ブリング・リング」:わからなさをわからないまま伝える映画

年を重ねていくと、若い世代の考えや行動の理由がわからなくなる。それが故に、いつも若い世代を代表する論客や若者論といったものがいつも世の中に出回っている。電化製品が普及するようになってからは新しいメディアを使いこなす若者と、その世界に入り込…

アルフォンソ・キュアロン「ゼロ・グラビティ」。完璧な映画ではないが、圧倒的な魅力に溢れる映画。

キュアロン監督の前作「トゥモロー・ワールド」は子どもが生まれなくなった近未来という設定で、奇跡的に生まれた赤ん坊を守りぬくというストーリーである。この映画で魅力的であったのは、驚異的な長回しによる映像である。特にラストの市街地での銃撃戦シ…

今年劇場公開の映画TOP5

今年はだいたい映画館で観たのが60本ぐらいでした。今年公開の新作映画のベスト5を書きたいと思います。 5位:劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語 観た人の中で賛否別れるんでしょうけど、めちゃくちゃ好きです。 マミさんとほむほむの銃撃シーン…

悪魔のしるし「注文の夥しい料理店についての簡潔な報告」

以下のレビューは、下流の観客からの視点に基いている。中流、上流の観客からはこれとは全く異なる感想を持っているだろうが、その観客になることは出来ないし、そのため気持ちを考えることも難しい。 悪魔のしるし「注文の夥しい料理店についての簡潔な報告…

Theater ZOU-NO-HANA「象はすべてを忘れない」

今はすっかりあの場所に馴染んだように見える赤レンガ倉庫だけど、横浜で生まれ育ってきた身からすればすごく違和感が残っている。中に入っているお店も魅力的ではないし、イマイチ何のためにあるのかよくわかっていない。おそらく、赤レンガがないと横浜か…

ソフィア・コッポラ「SOMEWHERE」

ハリウッドの映画スター、ジョニーは高級ホテルに暮らし、高そうなフェラーリを乗り回し、毎日女の子を部屋に呼び寄せるといったいかにも成功した男といった生活を送っている。こんな男を主人公に配置しておきながら、エル・ファニング演じるジョニーの娘が…

高畑勲監督「かぐや姫の物語」

ウォルト・ディズニー・カンパニーCEOのロバート・アイガーがカンブリア宮殿内のインタビューでこんなことを言っていた。 「質より前に「コスト」がきてしまうとリスクをとらなくなり、恐れるようになってしまうのです。それはどんな偉大なアーティストに…

サンプル「永い遠足」その1

始まり方が魅力的な文章はそれだけで読まれる可能性が高いということは文章を書く人にとっては当たり前のものとして持っているもので(そしてこの文章がいかに凡用な始まりであるかは言うまでもないが)、だからこそ文章を書き始められないという問題が発生…

砂田麻美監督「夢と狂気の王国」

ここ数年で、ジブリのドキュメンタリーといえば、NHKが放送しているというイメージが強い。NHKの「プロフェッショナル」という番組はある一人に密着する形式のドキュメンタリー番組で、ジブリの新作が公開されるたびに放送されている。といっても、ここ数回…

東葛スポーツ「ツール・ド・フランス」

それまでにもどんどん上げ続けるDJというのはいたと思うのだけれど、それでも2 many DJ'sの登場というのは個人的には衝撃だった。例えば、今youtubeで観ることが出来るReading Festivalの2011年の動画では、Chemical Brothers 'Hey Boy, Hey Girl (2ManyDJs …

ラビア・ムルエ「雲に乗って」

舞台上には、たくさんのCDケースや様々なものが置かれた机とスクリーンが置かれている。観客席が暗くなり、作品が始まると、一人の男がその机に向かって歩いてきて、机の前に置かれている椅子に座る。その歩き方を見るに、右半身に明らかに障害を抱えている…

6.2m @ シブカル際

6.2mは朗読を行う前田エマと、ダンスを行う中村かなえという女性ユニット。選曲を青野研一、朗読のテキストを内沼晋太郎が手がけている。シブカル祭で、PARCOの前に設営されたステージでパフォーマンスを行った。山の手線のSEから始まり、山の手線のSEで終わ…

Ryoji Ikeda「supercodex live set」@渋谷WWW

渋谷WWWで行われた、Ryoji Ikedaの “supercodex live set” World Premiereに行ってきた。前売りはソールドアウトしたため、観客席は超満員。真っ暗闇の中、ビートが鳴り、そのビートに合わせてスクリーン上に幾何学模様が変化していく曲からパフォーマンスが…

マイケル・チミノ「天国の門」デジタル修復版

一つの作品で会社が潰れるほどの予算を使ってしまうというのは、クリエイターとしては失格なのかもしれない。与えられた予算の中でいいものを作り、元を取っていくことでしか次につながっていかないのだから。しかし、それだけの予算を使ってまで追求したい…

鳥公園「甘露」

「やりたいこととかないの?」という声が地下から聞こえ、最初から意表を突いた形で劇が始まる。そして、終わった頃には時間と空間がネジ曲がったような感覚になっていた。この不思議な感覚はどうやって生まれただろうか。 まず簡単に今回の作品のステージの…

Perfume「LEVEL3」

capsule「FRUITS CLiPPER」から始まった中田ヤスタカのダンス・ミュージックに対するチャレンジの歴史が最高の結果で実を結んだのが、Perfume「LEVEL3」だ。今年、サカナクション「sakanaction」と並び、日本のダンス・ミュージックのアルバムの最高峰をいく…

マームとジプシー「COCOON」

今日マチ子が、戦時中の沖縄の女学生について描いた「COCOON」を原作にした作品。原作との比較で言うと、原作では少ししかなかった看護隊に入る前の学校でのエピソードがかなり大きく扱われ、看護隊に入る前、看護隊での活動、看護隊解散後といった3部構成に…

今年上半期のマイ・ベスト

■音楽編 非常にベタなランキングです。 が、Kanye Westが入ってないなぁとか、Disclosureがないとかあります。・3位:Daft Punk「Random Access Memories」 ・2位:Rhye 「Woman」 ・1位:Justin Timberlake 「20/20 Experience」 ■映画 なんか今年は不発感…

Vampire Weekend「Modern Vampires of the City」

音楽には国籍がある。特にロック・ミュージックには。多くのバンドの音は、これはアメリカのバンド、これはイギリスのバンド、これはオーストラリア、これはヨーロッパの他の国ぐらいの分類はできる。このことはそれほど難しいことではなく、TSUTAYAから僅か…

ままごと「朝がある 弾き語りツアー」

「演劇の面白さは本当はないものが見えること」と最初に大石将弘が話す。演劇の魅力を諭すように始まるこの劇は大きく分けて2つのパートがある。そのパートについて話す前に、この劇の内容について話しておきたい。 2013年7月9日月曜日。東京から離れたA県K…

スティーブン・スピルバーグ「リンカーン」

日本で憲法改正の議論が盛り上がっている。自民党が最初に改正を求めている96条、所属議員の3分の2以上の賛同による発議、まさに憲法改正のためにその3分の2をめぐるやり取りを描いた映画が「リンカーン」だ。アメリカと日本とで3分の2の元となる議員の条件…

!!!(Chk Chk Chk) 「THR!!!ER」

前作のリリースからこの新たなアルバムが出てくるまで3年。その3年の間には大きな変化があった。ディスコ・パンクブームの火付け役だったLCD SOUNDSYSTEMは解散し、ハウスビートを取り入れたThe Raptureの新作は静かな反応で終わった。また、海を跨いだイギ…

バターミルクランチドレッシング

ふとテレビを見ていたらこのCMがやっていた。この女優さん、めっちゃかわいいなーと思ったので調べたところ、 玉城ティナさんという方らしいということがわかった。キューピーすごい!、広告代理店すごい!と思った瞬間でした。

Redial

映像は村上隆プロデユースらしい。サビのダンスと振りがかなりかわいい。

岡崎藝術座「隣人ジミーの不在」その1

2012年後半、僕には様々な新しく幸福な出会いがあった。そしてその年末に、来年は今までいくつかの点で敬遠していた「演劇」を観てみようと思った。敬遠していた理由は大きく分ければ、3つあった。ひとつ目は今最も興味があるのが映画で、その時間を削られた…

王になった男

ここ5年でも「チェイサー」、「ポエトリー アグネスの詩」、「高地戦 THE FRONT LINE」といった「韓国映画」という枠を超えた名作が受賞している、韓国の映画賞「大鐘賞」の最優秀作品賞。2012年にその「大鐘賞」最優秀作品賞を受賞したのが、「王になった男…

ダーティーサイエンス

僕にとって、2011年救いになった2曲ある。S.l.a.c.k., TAMU, PUNPEE, 仙人掌による「But This is Way」とRHYMESTERの「そしてまた歌い出す」だ。前者は震災があったあとすぐに発表された曲で、あの日から数日経ったときの気持ちをすっとすくい上げるようなリ…

ムーンライズ・キングダム

「僕は、映画を新しいもの、今までと違うものに見せること、そして、どうやってうまくストーリーを伝えたらいいのかに全エネルギーを注いでる。それでも、舞台をニューヨークやイタリア、船上やインドの列車にしても、人からは“この映画はあなたのほかの作品…