小林弘人「新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に」
以前、どこぞの講演会でお話を聞いたときにすごく面白かった
インフォバーンの小林弘人さんの著書。
なぜ、小林さんの話が面白いと思ったのかこの本を読んで思い出した。
小林さんのメディアビジネスに対する考え方はとてもバランスがいい。
メディアビジネスを考えるとどうしてもネットVS既存マスメディアの二項対立になりがちだけれども
そうではなく中間を取っていくような話の進め方になっているように思う。
それもネットがこうだから既存メディアはこうなるしか道はないです、みたいな議論ではなくて
既存マスメディアの用語を今の時代に合わせて再解釈していくという手法がいいのだと思った。
僕が一番重要だと思ったところは「出版」という言葉について説明するこの部分。
読者に届ける手段について、それが「搬送」、もしくは「通信」、あるいは「放送」なのか言葉の定義はともかく、それらはすべて送り手側と受け手側にとってコンテンツをやり取りする際の広義な意味での「プロトコル(通信手順)」にしか過ぎません。(p57)
この本に出てくる「誰でもメディア」の時代では文字通り誰でもメディアを持つことが可能だし、
1次情報だけが重要な価値を生むわけではなく、
ニュースに対する他の人では思いつかないような見解や意見も重要な価値を持っている。
もしくはこの本で言う「エコー」と呼ばれるようなメタ的な視点で情報をまとめるだけでも
視聴者にとって有益なコンテンツに成り得る状況になっている。
これだけ簡単にメディアを立ち上げることが出来るようになれば、
当然情報のひとつひとつ価値自体は相対的に下がっていくし、
視聴者の限られた時間の奪い合いはそれだけ激しくなる。
この本ではそういった現状分析をした上で個人が「出版」という仕事をしていきたいと考える個人に
どういった行動を取っていくべきなのかその指針を示している。
勘のいい人ならここまでの環境分析を読めばどういった処方箋が書かれているかわかるのかもしれない。
とりあえず、僕が始めるにはいろいろと足りない技術がある。
まずはこの冴えないブログで存在感を出していくことからでしょうか。
メディア関連の勉強をしている人、仕事をしている人は事例もかなり多いですし、
読んでおいて間違いないでしょう!
そういえば、あとがきに文化系トークラジオのサブパーソナリティの柳瀬兄貴の名前が。
こういう面白い本の担当をしているってのがすごいなぁ。