OhmyNewsの敗北について

日本版のOhmyNewsが名称変更して、「Oh! MyLife」に変わることのこと。
個人的には、この名称変更はOhmyNewsの敗北だと捉えている。


韓国ではOhmyNews盧武鉉政権に貢献した、というような
いわゆるジャーナリズム的な視点から語られることが多かったわけで。
そういった前評判や日本に入ってきたときの期待から考えると、
(期待はあんまりなかったかも…)
今回の名称変更&カテゴリー変更はその路線での経営が難しいということなのだろう。


では、日本で受けなかった理由はどこなのかという話だけれど、
理由はたぶん四つだと思う。


その前にまず、韓国でこのメディアが成功した理由についてみてみる。
「ブログがジャーナリズムを変える」という本から引用すると、

理由の一つは韓国の既存メディアが保守寄りで、国民は別の議論を求めていたから。二つ目は、国民の75%がブロードバンド接続というネット先進国だから。三つ目は、韓国の国土が狭く、市民記者の記事の裏を取るために現場に向かう場合でも、二時間以内に現場に到着できること。四つ目の理由として、社会の関心が少数の問題に集中するという国民性を挙げている。そして、最大の理由として、二十代、三十代の若者は革新的な考えを持っていて、実際に活動に参加する若者が多いからだとしている。
(湯川、2006:138)

ここから考えていくとまず、理由の一つ目は既存メディアの状況がある。
日本とは違うのが「韓国の既存メディアが保守寄り」と言うところだろう。
知りたい欲求が満たされていない状況で、市民という自分たちに近い立場の人間が
権力に対しての記事を書くということのスリリングさがあったのだろうと思う。
日本では書く人がいても瞬間風速的には盛り上がってもその後も長続きするようには思わない。


理由の二つ目は日本に入ってくるのが決定的に遅かった。
日本ではweb2.0のブームでブログがめちゃくちゃ流行ったのが2005年とかだと思う。
インターネットマガジンオライリーのインタビュー読んでクソ興奮した記憶がある…)
で、その段階でかなりの人が試しにブログを作ってみるということをしてしまった。
わざわざ、OhmyNewsに登録して記事を書くということをしなくても、
自分の意見を発表できる場所をみんなが持ってしまったというのがデカかったと思う。
今はブログ作ろうかなーと言う人がいても、OhmyNews登録しようかなーとか言ってる人はいない。


理由の三つ目は日本のネットの匿名文化だと思う。
2ちゃんねるにせよ、日本のブログにせよ、
実名で全体に向かって考えを言うという文化がその当時は薄かった。
その後、mixiに実名で登録してそういう文化が根付くかと思いきや、
様々な炎上事件などがあり、今では実名での登録が推奨されなくなっている。
日本ではネット上の意見表明は匿名のものが決定的に多いと思う。
その一方で、OhmyNewsは実名での登録制。
市民記者となる人がその辺りで二の足を踏むという場面もあったのではないか?


とか、まじめそうなことをいくつか言ってみたものの決定的に足りなかったのは
プロモーションだと思う。
たぶん、OhmyNewsとか10人聞いたら9人は知らないよ。
韓国の盧武鉉政権の一連の流れみたいに国民がこのメディアに注目する機会が、
全くなかった。
もちろん、政治的な騒動をプロモーションとして使うのはどうなの的な話はあるかもだけど、
それでも知られていないメディア、見ていないメディアの価値は全体としては低いわけで。


僕個人としては、記事を書いてお金をもらえるというその1点のみに興味を持っていたけど、
優秀なブロガーならGoogle AdsenseとかAmazonアフィリエイトとかで、
少しずつお金をもらえる時代になっていると思うのでその点も価値が薄れていったなぁとしみじみ。
ま、名称が変更されてもたぶん見ないわな。

参考文献(ひとつしかないですが)
湯川鶴章、2006、「ブログがジャーナリズムを変える」、NTT出版