最強のふたり

現在、文字通り大ヒット中の「最強のふたり」についてのレビューです。
すごく素敵な映画でした。

映画としては、似たようなテーマの「潜水服は蝶の夢を見る」のほうがいいとは思いますが、
この映画のほうが見終わったあとの気持ちよさ、幸せ感は上かなと思います。

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事故によって首から下が不随になってしまった富豪と、その介護役として雇われた貧しい地域出身の黒人との出会いから「最強のふたり」になるまでを描いたヒューマンドラマ。
今まで生きてきた中で、立場も年齢も大きく異る二人が「最強」とまで言える関係になるには、互いに互いを信用し、なくてはならない存在でなければならない。


富豪であり、かつ障害者であるということと、貧しい地域に住んでいて、かつ黒人ということは、それぞれ頭を悩ます原因となっている。
富豪であるために、本当は寄せ付けたくない人達に寄りつかれたり、また対等に扱ってもらうことが難しい。事故による体のマヒは「対等に扱われる」ということの困難さに拍車をかける。
黒人が多く住んでいる貧しい地域では、治安は悪く、仕事も少ない。そのため、そこから抜け出すことが難しいこともわかる。また、抜け出すことが出来ない限りその地域の外にいる人達と接触を持つこともない。だからこそ、歯に衣着せぬブラックジョークを仲間内でぶつけ合うことでしか、今自分が生きている現実を笑い飛ばすことが出来ない。


この二人は、お互いの悩みをお互いの境遇によって持ち得たものによって解決することが出来る稀有な関係である。介護役として雇うことで、その地域からの脱出と自立をサポートし、歯に衣着せぬブラックジョークをぶつけることで障害者であることなど気にせず接してみせる。


あまりに境遇が違うためいい形で出会うことは難しいが、今回のような出会い、そして覚悟を決めて時間を過ごすことさえすれば、パートナーとして認め合うことが出来るのだろう。関係を深めていく際の葛藤などがほとんどなく、こんなうまい話があるものかと思うのだが、「実話を元にしたストーリー」と言われると何も言い返すことが出来ない。


ストーリーとしては、「出会うべくして出会った俺たち最強!」ということなのだが、観ている間は二人の相性の良さから生まれる日常のやり取りを見ているだけでも幸せな気持ちになってくる。ハリウッド大作のような一喜一憂がなく、ただただ幸せなこういった映画を観るのもいいのではないか。

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