UCCのtwitterキャンペーンから考える企業のtwitter利用法について

外野からではあるけれども、この3日間で話題になったUCCtwitterキャンペーンについて、
自分なりにまとめをしておきたいと思う。
そもそも、UCCtwitterキャンペーンとは…

同社によると、コーヒーにちなんだエッセイなどを募集するキャンペーンを告知するため、同社が取得した複数のTwitterアカウントを使い、5 日午前10時からメッセージ送信を始めた。Twitter上から「コーヒー」「懸賞」といったキーワードが入ったつぶやきを検索し、そのユーザー宛てに BOTが「コーヒーにまつわるエッセイとアートを募集中!エッセイで賞金200万円!アートで賞金100万円!締切間近!!」とリプライしていたという。

フォローしていないアカウントからプロモーション的なメッセージが送られてくる上、同様のアカウントが複数稼働していたことが分かったため、「UCCを偽装したアカウントによるスパムBOTではないか」と不審がるつぶやきが多数投稿されていた。
ITmedia:UCC、Twitterでのキャンペーン告知を謝罪 複数アカウントのBOTでメッセージ送信

エッセイを募集しているキャンペーンはこちら。
http://www.ucc.co.jp/gcs/
結果的にはこのエッセイを募集するキャンペーンはある程度の人に伝わったものの、「なんか必死だな…。」感は否めない感じになってしまいました。


で、このキャンペーン自体はリプライする複数のBOTが全てスパム扱いされてアカウント自体が全て消滅するなどいわゆる炎上してしまい、
UCC上島珈琲株式会社もその日のうちに謝罪文を公開することになった。
http://www.ucc.co.jp/gcs/twitter.html
ただ、僕はこの謝罪文自体なんかズレているような気がしている。
UCC上島珈琲株式会社が問題点としてあげた内容は以下の二つ。

問題点
・ 了承を得ていないユーザー様に対して、自動的に宣伝メッセージを送付したこと。(…1)
botが複数あることによって、同一文面を送り続けるというTwitterの規約に違反したこと。(…2)
http://www.ucc.co.jp/gcs/twitter.html(カッコの部分は便宜上僕が記入)

順番通りに出来ないが、まず問題点2に関してはこういった文書に対しては記入は必要ではあると思うけれども、
謝罪すべき対象はtwitter本体であるように思う。
だって、規約はtwitterが決めているものであるのだから。
ユーザーいや、twitterなんて使っていない人に対して、「規約破ってしまいました。ごめんなさい。」と言っても
「へぇ。そんなルールがあるんだ。それはお気の毒に。」といったぐらいのものだろう。
大した話ではないように思う。


で、1に関してであるけれどもこれもなかなか線引きが難しいように思う。

 代理店がどこであるのかは知らないし擁護するつもりもないのだが、わたしが知る限りこうしたTwitterを使ったメッセージの自動送付キャンペーンを最初にやったのは米国の製薬会社だったと思う。「風邪」というキーワードを含む「つぶやき」をしたユーザーに対し風邪薬のクーポンを送るというキャンペーンだった。

 そのときの米国のユーザーの反応は、実は概ね好意的だった。目新しいキャンペーン手法を、面白がっているところがあったように思う。

 もちろんそれは最初のキャンペーンだったからで、「同様のキャンペーンが増えてくれば嫌だね」という話は確かに既に出ていた。今回のキャンペーンで残念なのは、関係者が日本のTwitterユーザーの受け止め方を予測できなかった、ということなのだと思う。
Tech Wave:UCCのTwitter騒動に思うマーケティングの本質的変化

Tech Waveの湯川さんは海外の事例を引用して比較をしているのだけれども、クーポンを配布するのと懸賞キャンペーンの告知をするのでは大きく違いがある。
どのあたりに違いがあるかと言えば、「ありがたい」と思うか否かであると思う。
上の事例で言えば、「風邪ひいちゃったんだよね。」というつぶやきをした人はこれから薬局に行って風邪薬を買う可能性が高い。
だから、クーポンがもらえれば「嬉しい」。だから、「迷惑だと思わない(=スパム報告をしない)」。
UCCの場合は「コーヒー」or「懸賞」のキーワードにリプライしてたらしいので、
例えば「眠くて仕事がはかどらないからコーヒー飲む。」とかいうつぶやきに対して、
「コーヒーに関するエッセイを書くといくらいくらもらえます」というリプライをもらったら「なんだよこれ??」と思う。
で、僕ならリプライしたアカウントをチェックする。
で、同じようなつぶやきしかしていなければスパムとして報告する。はっきり言って邪魔だから。


だから、UCC上島珈琲株式会社はわかりやすく「了承を得ていないユーザー様に対して、自動的に宣伝メッセージを送付したこと。」としているけど
問題はそこではなくて多くの人に「今」必要ではない(読む時間を無駄にした)リプライをしてしまったことが問題なんだと思う。
だって、国内でも例えば「ドロリッチなう」とかはBOTだけど受けてた。
http://d.hatena.ne.jp/iga19/20090827/p1
企業発ではなく勝手キャンペーンという違いはあるが、BOTだから当然「了承を得ていないユーザー」に対してのものでも
多くの人がこぞってリプライされたあとから「ドロリッチなう」とつぶやいていた。
これも自分がつぶやいた内容に対して予想外のリプライが返ってきたことへの嬉しい驚きがそうさせているのだと思う。
僕なんかはわざわざブログで書くぐらい喜んでしまったし。


ということで、企業側としてはシステマチックに線引きしたいのはわかるのだけれども
僕個人としては「ユーザーが今嬉しいと思う(などプラスの感情になる)ような内容をリプライするBOTならあり。」という結論である。
ポイントとしては「今」というのがあって、
リプライの内容が例えば半年後とかのイベント告知だったら嬉しいかもしれないけど「なんだよこれ??」と思うかも。
「今」というのがいつまでという線引きはかなり難しい。
けど、今すぐ予定として決められるぐらい(1週間ぐらい?)が幅の限界であるように思う。

ソーシャルメディア活動を始める時に参考にした海外の企業例はありますか?

熊村:海外企業でも参考にした事例はありますが、「鵜呑み」にするのは危険だと思います。今回、しっかりとしたSMM活動のフレームワークを作って行く際に、一番注意した点はそこなんです。海外の事例がそのまま日本で本当に上手く行くかどうかわかりませんから。「これアメリカだから上手くいったんじゃないの?」ということって結構あると思うんですよ。

 日本のインターネットをその環境や文化も含めて考えた時に、果たして「自分たちで情報を発信しよう」と積極的に考えている人がどれだけいるんだろうかという部分で、やはりアメリカとは大きく異なっていると思うんです。日本では、自分の意見をしっかり持って、その意見を流布させる為にブログを活用している人ってあまり多くないのではないでしょうか?意外と二次情報が多いという気がします。
Social Media Marketing Lab:【キーパーソンインタビュー】日本初のソーシャルメディアリード 熊村剛輔氏に聞く(1/ 3)

twitterのキャンペーンで難しいのは国内海外を問わず、他社の成功事例をそのまま転用しても失敗してしまう可能性が高いということだと思う。
(もちろん、海外の事例の場合はユーザーの考え方自体が違う可能性もあるのだからより注意が必要だと思う)
当たり前のことだけど、商品が違えばリプライされて「嬉しい」と思う内容は変わるし、
同じ業界でやられている取り組みを競合他社がマネした場合一瞬で炎上すると思う。
僕は成功事例を積み上げていけばいくほど、事例とは違う新しいキャンペーンを生み出さなくてはいけなくなってしまうなぁと思うのです。
他の企業が使ったアイデアを真似すれば炎上し、今役立たない内容でも炎上する。
自分たちの商品でユーザーの人たちが喜んでくれる内容で、かつ他の企業が試していないことをアイデア出しをする。
これは代理店がやるにしても、企業の担当者がやるにしてもかなりキツイと思う。
だから、「twitterマーケティング」という言葉自体あまりいい言葉ではないようにも思います。
たぶん、マスプロモーションとしてはかなり使いにくいし使ったとしても人のリソースがかなり必要になる。


うちの母もtwitterを知っているぐらいなのでtwitter自体はたぶんキャズムを超えたんだと思うけど
企業の利用方法については試行錯誤するんだと思います。
ただ、既に様々な人が伝えている通りtwitterは対話を中心としたツールになるのではと思います。

 そしてキャンペーンや宣伝文を流すコツについては、正直に「分からない」と答えている。そんなのケースバイケースだし業界や状況によって異なるので、正解などない。「これが正しいTwitterを使った情報伝播の形です」なんてものは存在しないということなのだろう。その代わりBinhammer氏は「分からなければTwitterを使って聞いてみればいい」と語っている。「こんな情報流したいんだけど、これって迷惑かなあ」と聞いてみればいい、というわけだ。

 消費者の話を聞くということが、これまでのメディア環境ではなかなかできなかった。ところがソーシャルメディアの普及でそれが可能になったわけだ。これがソーシャルメディアマーケティングの本質だし、これまでのマーケティングと大きく異なる点なんだと思う。話を聞くことで、消費者との関係を強化できるのだと思う。
Tech Wave:UCCのTwitter騒動に思うマーケティングの本質的変化

宣伝文を「分からなければTwitterを使って聞いてみればいい」というのはマジかよ!?と思う話だけれども、
海外ならそれでもOKということなのだろう。
それぐらい企業とユーザーがフランクに話せる話としてtwitterが機能しているのかもしれないし、一部のユーザーに限られているのかもしれない。
そこはソーシャルメディアを研究しているわけではないのでわからないです。
ただ、相談されてリプライされた内容が反映された宣伝が行なわれたらものすごく嬉しいだろうなとは思う。
あとはカスタマーサービスとかを補完する使い方としてのtwitterの利用とかだろうな。
これはスムーズに受け入れられると思う。だって、今役立つから。
結局、人に何かを伝えるってことは変わらないんだと思うんですけどね。
ただそんなことはわかっていても実際に行うのはものすごく大変だと思う。担当者の方は頑張ってください。