藤井大輔「「R25」のつくりかた」

前々から読みたいと思っていた新書、「R25」のつくりかた。
「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ)
読み始めると、あっと言う間に読み終わりこれで850円って高くないか??
としみじみ思ったのですが、内容的には面白い。


R25を初めて手に取ったとき、たぶん大学生の1年生ときだったと思うけれど
こんな面白いものがタダで読めるってすごい!!と本当に思いました。
大学から自宅の間で、木曜日に通る場所でどこなら確実に手に入るか毎週真剣に考えてました。
その当時はまだまだ知らない人も多くて、
毎週手に入れていることに「やった!」と思う部分もあったり。
そのフリーペーパーがどんな風に事業として立ち上がったかを書いている本なわけで
そりゃ当然読んでみたいという話なわけです。


読んでリクルートらしいなぁと思ったのは、
M1層をターゲットにした「ペーパーポータル」となるメディアを作るというコンセプトから
実際のR25のコンテンツを決めていくまでのリサーチの段階。
他のリクルート本を読んでも、ここでターゲットになる人たちに「ホンネ」で話してもらえる場を
大量に設けることによって「インサイト」を得る過程が書かれていることが多い。
とにかくたくさんの人に会うっていうのがやっぱり現実問題としては難しいし、
なおかつ「ホンネ」を引き出すことはさらに難しい。
このリサーチを通じて、M1層の特徴が「梅干し」であることがわかり前に進める。
このインタビュー手法だけでも参考になる。
メディアはそういったことやっていかないとダメだろうなと思うけど、どうなんだろう。


あとは、ナショナルクライアントの広告が入るということについても、
相当練られているなぁと思った。
単に、今まで雑誌や新聞を読まないといわれているM1層をターゲットとして取り込めているだけでなく
エリアマーケティングというか、心理的マーケティングも最初から考えられている。
そりゃ、営業もプレゼンしやすいだろうなぁと思う。

会社帰りの電車で読むイメージをさらに膨らますと、会社というONの場所から、家というOFFの場所へと帰っていくわけですから、当然読者の頭の中もゆるらかにOFFモードに切り替わっていく。フリーマガジンの台割(全体構成のようなもの)もそれに沿ったものにしよう。
そして、この流れを作ったことで、広告主もイメージできるようになりました。フリーマガジンを読んで駅を降りたときに寄るところ、あるいは消費をするもの。M1層は、最寄り駅から自宅に帰るまでに、必ずといっていいほどコンビニに立ち寄る。(中略)立ち寄る直前のコンタクトポイントでM1層が見るメディアですよ、という価格設定ができます。
(p81)

この部分に、なぜ広告が入るのかが集約されていますね。
駅のラックにもこういった「広告的」な意味があるのかと思うと戦略とはこういうことかと思います。


とはいえ、個人的にはR25を手に取る機会がかなり減ってしまったのも事実で
周りの多くの人が既に知っているわけで、
以前ほどの「お得感」が減ってしまった感じがしたからなんですけども。
こういった声についても当然、受け止めているわけでそのことをこう書いています。

R25って、昔みたいな勢いがなくなったね」「飽きられちゃったかもね」と言われたり、もっといえば「R25って、読んでいるの恥ずかしくない?」という言葉まで出始めている。もちろん、そういった言葉に対して僕たちは危機感を持たなければいけないと思う反面、あまりに振り回されることもないと思っています。それは逆にある程度のマジョリティーを獲得したがゆえのことだとも思うからです。
(p173)

この本を読めば分かるけれども、彼らが狙っていたのは首都圏にいる300万人のM1層のうちの、
3分の1である100万人を獲得するメディアを作ることだった。
ともすると、R25の初期を支えていたような読者がいなくなっても、
確実に取ってもらえる100万人を選ぶというのは間違っていない戦略だと思います。
いや、広告という面から考えれば正しい選択であるように思います。


モバイル版がなくなったり、リクルートからは評価されていないとか、
いろいろとネガティブな話も聞くけれども、
一から新しくこれだけの部数を出すメディアを作りあげるというのは並大抵のことではないと思います。
フリーペーパーブームを作ったメディアです。
自分が読むことはなくても、長く続いていって欲しいなぁと思います。

「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ)
藤井 大輔
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 26268
おすすめ度の平均: 4.0
4 ターゲットとされるということ
5 見事に若者の目線を捉えてる
4 マーケティングインサイトの勝利
5 R25を手にしたことがある人は必見。
3 R25的に軽い気持ちで読めば面白い本です。