山田まさる「脱広告・超PR―広告を信じなくなった消費者を動かす「連鎖型」IMC」

タイトルが「脱広告・超PR」ということで、
今年、広告周りの本で話題になっている「戦略PR」系の本だと思い購入。
脱広告・超PR―広告を信じなくなった消費者を動かす「連鎖型」IMC
個人的には「連鎖型IMC」の部分のほうが刺さるのですが、それは置いておき。
結果的にはタイトルには裏切られつつ、内容には満足しつつ。


とりあえず、読んですぐにわかるのはこのタイトル自体が「釣り」だなぁということ。
ちょっと長いですが、このことを述べている部分を引用します。

刷り込み型のマーケティング・コミュニケーションの限界は、昨日今日わかったことではありません。マーケッターはこの10年、ブロガー対策、BUZZマーケティングSEOリスティング広告、そして戦略PRまで、さまざまな施策にチャレンジしてきました。
この10年ではっきりしたことは、どの戦術を用いても、これまでの広告(特に、テレビコマーシャル)に代わるような「決定打」はなかったということでしょう。つまり、戦術レベルで新しいことに挑戦しても、戦略の転換を図らないと、一つひとつの戦術も活きてこないということが明らかになったのだと思います。(p39)

PR会社の方が、ここまではっきりと戦術として決定打になるものはなかったと
言い切るのはすごいなぁと思います。
若輩者なので、PRの見直しがどう起きたのかは後から勉強している身ですが、
「ポジショニング戦略」を書いたアル・ライズが「ブランドは広告でつくれない」という本を出版したことで
PRの分野が見直されたというか、ブームになったみたいな話しを聞きました。

ブランドは広告でつくれない 広告vsPR
アル・ライズ ローラ・ライズ 共同PR株式会社
翔泳社
売り上げランキング: 14854
暴力的に要約すれば「もう広告なんて効かないから、これからはPRだ」みたいな本です。
それを広告によってポジショニングしましょう!ってことを書いてた人が出してた。


ただ、そこからさらに一巡してみればPR会社の人がどれも戦術であって、
戦略の決定打にはならなかったという話から始まる本を出すんだからプロモーションは難しいです。


じゃあ、この本ではどう考えているかと言えば戦術は人に伝わる過程で必要なものは全て使う。
それよりも、人への伝達のパターンを4パターンに分けて段階的に広がるように計算する。
ということのように感じました。
それが、この本に出てくるキーワード「洞察」「説得」「拡声」「連鎖」の部分。
この過程で手法として近いのはPRの分野だと思いますが、
連鎖の部分で使われるのはWEBキャンペーン(広告?)だったり、店頭でのSPだったりなので
適材適所で他のものは使っていくというスタンスは変わらず取っているなぁと思います。
とはいえ、著者の山田さんがPRエージェンシーで働いている方なので、
書かれているのはPRエージェンシーで行っている部分がメイン。
広告寄りの部分とか、SP寄り、WEB寄りの部分はやっぱり不足していると思う。
SP寄りで統合型マーケティングコミュニケーションの本とか出たら面白そうだなぁと思うけれど
そういった本書ける人いないのかしら。


とはいえ、人への伝わり方でパターンを考えるのは大変面白かったし、
事例も多いし、図がすごくキレイでかつまとまっているので、
資料として買うのも全然ありだなぁと思う。
これから3年ぐらいのプロモーションを考える上で大事な本であると思います。

脱広告・超PR―広告を信じなくなった消費者を動かす「連鎖型」IMC
山田 まさる
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 780
おすすめ度の平均: 4.5
4 コミュニケーションを生業とするすべてのヒトに
4 人を動かす戦略とは
3 不況もナンノその。まだあきらめなくてもいい!?
5 非常に興味深く読みごたえのある一冊
5 これからのマーケティングコミュニケーションを考える上でのバイブルです