天野祐吉「広告も変わったねぇ。「ぼくと広告批評」と「広告の転形期」についてお話しします。」

多くの人から惜しまれながらも今年の4月で休刊した広告批評の発行人だった天野祐吉さんと
杉山恒太郎中島信也佐藤尚之、伊藤直樹、谷山雅計といった超有名なクリエーターとの対談集。
広告も変わったねぇ。「ぼくと広告批評」と「広告の転形期」についてお話しします。


副題にもある通り、広告批評の話も出てきてなぜ休刊なのかについても伊藤直樹さんとの対談で出てくる。

天野:なるほどね。そうやってハンゲームのキャンペーンを考えたのはわかったけど、ぼくら批評をする側としては、そういうのは厄介なんだよね(笑)。全体の構造を批評しなくてはいけなくなっちゃうから…。
伊藤:そうですね、「構造批評」ですね。
天野:そう、「広告批評」じゃなくて「構造批評」。あるいは、キャンペーン全体を構築する棟梁の「棟梁批評」ね。(p183)

広告批評オタク」と自称する伊藤さんがこういった発言を引き出すことになる仕事をしているというのが、
読んでいて何とも言えない気持ちになります。
自分が構造まで含みこみで批評できればいいなかとは思うけれど、まだまだ知識も思考能力も足りない。
批評って考えれば考えるほど難しいんだよね。
天野さんほど柔らかい言葉で批評できるってのは本当にすごいと思う。


その他、個人的に気に入ったところを引用。

杉山:ただね、コミュニケーションデザインは、いろんなメディアを組み合わせて使う「仕組みの設計」でも、インターネットなんかの「新しい技術を駆使すること」でもないんですよ。ぼくのもっとも若い弟子にあたる岸勇希くんなんかは、「大切なのは、仕組みではなく人の気持ちをデザインすることだ」っていってますけど、どんなにメディアの環境や手法が変化したとしても、結局、ぼくらの仕事は人の気持ちが動くようなコミュニケーションを生み出すことにつきると思うんです。(p72)

天野:ぼくは広告には、大きく分けて3つの情報があると思っている。商品についての情報を伝える「インフォメーション」、使った人がああだこうだったと感想をいう「レポート」、企業が自社の考え方を生活者に伝える「オピニオン」。広告は、この3つがぐちゃぐちゃと混ざりあってできていると思うんですよ。
中島:なるほど。わかります。(p103)

あとは、佐藤尚之さんの「行動導線」と「キャプティブ」って考え方はとてもよいなぁと。


やっぱり、こういったところが気に入ってしまう辺り、
コミュニケーションデザインの考え方が好きだし、
だからこそ、自分でもやれるだけのクリエイティビティが欲しいなと真剣に思う。
今自分に出来るのはそんな奇跡的なチャンスが訪れたときのために、
たくさんの事例を見たり勉強したりしていくことかなぁ。


本自体の感想に戻すと、
どの対談もその分野のトップの広告に対する考え方がわかるので大変面白いです。
この本面白かったすよ!と上司にアピールしてしまいました。
ただ、眠そうで話半分にしか聞いてなかったのが残念。プレゼン力不足ってやつです。
普通にオススメです!

広告も変わったねぇ。「ぼくと広告批評」と「広告の転形期」についてお話しします。
天野 祐吉
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4 このバランス感覚!
5 天野さん、よくぞ話し合ってくれましたっ!
5 これは立派な社会時評