城田真琴「クラウドの衝撃―IT史上最大の創造的破壊が始まった」
野村総合研究所の方が書かれたクラウド・コンピューティングに関する本。
本当はニコラス・G・カーの「クラウド化する世界」を読みたかったけれど、
ちょっと高いなぁという感じだったのでこちらを読むことに。
なぜ、クラウド・コンピューティングを知っておく必要があるのかと言えば、
「次世代マーケティングプラットフォーム」の中で出てくるメインの企業に
SaaS型のCRMを提供しているSalesforce.comが出てくるわけです。
なので、こういった企業が技術的にどういったものがベースになっているのか知っておくのは
大事なことかなと思ったりしたわけです。
あとは、来週からアメリカ行くときにクラウド・コンピューティングの話を
ある会社で聞かせていただけるということで、勉強しておかなければと思ったのがあったり。
Salesforceに関してはこの部分が面白いなと思った。
また、米セールスフォース・ドットコムの上級副社長で同社日本法人社長の宇陀栄次氏は、以前、「セールスフォース・ドットコムのコア・コンピタンスは何か?」という筆者の問いに対し、「運用ノウハウである」と答えている。「ソフトウェア・アーキテクチャ」といった答えを予想していた筆者は、その迷いのない返答が非常に印象に残っている。
城田真琴、クラウドの衝撃―IT史上最大の創造的破壊が始まった、p64
クライアントを獲得すればするほど、サーバに掛かる負担は大きくなるわけで、
この負担をどれだけ分散して処理出来るか?というのがSaaS型のサービスを行う上で、
重要なことがわかる。
いくら安価だと言っても使いたいときに使えなければ契約している意味はないわけで、
そこが生命線なのかもしれない。
また、導入にあたっての現状の課題としてこの本で挙げられているのは、
「セキュリティ」「データの保管場所」「アクセスログの管理」「パフォーマンス」「移植性」「ソフトウェア・ライセンス」「データのバックアップなどの災害対策」とある。
この点から見ても、どこでどのようにサーバーが運用されているのか?は公表できるものではないにしても、
ひとつ不審感を与えるようなことが起きるとたちまち信頼関係が崩れるという面もあるのかもしれない。
あとは、クラウド・コンピューティングという切り口で見るとグーグルの様々な取り組みに
一貫性があるのがよくわかる。これは大変驚きだった。
それは、グリーンエネルギーへの投資とGoogle Chromeというブラウザーのリリースである。
グリーンエネルギーについては、
クラウド・コンピューティングでは、処理能力が不足した際、サーバの台数を増やして処理能力を向上させる「スケールアウト」という手法を採用している。このため、データセンターの電源容量の限界によりサーバが追加できなくなってしまうという事態だけは絶対に避けなければならない。最近、グーグルが水力発電所や原子力発電所、風力発電所の近くにデータセンターを建設しているのは、安定した電力の供給が期待できるからである。
城田真琴、クラウドの衝撃―IT史上最大の創造的破壊が始まった、p206
こういったサーバを大量に運用するサービスをメインに行っている以上、
常に電力の供給がなければならない。
となると、グリーンエネルギーを作っている場所の近くにデータセンターを作るのはもちろんだし、
効率的なエネルギーを生み出すような企業に投資を行うのも納得がいく。
Google Chromeについては
「われわれが本当に必要としたのは、ただのブラウザだけではなく、WebページとWebアプリケーションのためのモダンなプラットフォームである」とグーグルの公式ブログで、同社が独自ブラウザの開発に着手した経緯が説明されている。グーグルは今後、ますます複雑になるであろうWebアプリケーションが快適に動くプラットフォームとしての役割をブラウザに求めたのである。
城田真琴、クラウドの衝撃―IT史上最大の創造的破壊が始まった、p221
Web上でサクサク動くというブラウザはどう考えてもInternet Explorerではないと思うし、
(どんだけ遅いんだよ!ってほど遅いし、どんだけ止まるんだよ!ってぐらい止まるし)
安定して動くブラウザというのもクラウド・コンピューティングが成り立つ上で、
大事な要素ということがよくわかった。
で、これをどう広告業界に生かすかということが問題だと思うけれども、
米IDCはシンガポールと香港で現地時間2009年3月5日,クラウド・コンピューティングの今後の展望について調査した結果を発表した。それによると,クラウド・サービスに対する世界IT支出は2012年に現在の約3倍に拡大し,420億ドルに達する見込み。 (中略)
クラウド・コンピューティングを利用する主な理由については,50%以上がコスト削減を挙げた。しかし,ベンダーは利用料を下げるだけではクラウド・サービスを成功に導くことはできないと,IDCは指摘する。ユーザーはサービスを選定する際の基準として,料金体系だけでなく,サービス品質保証契約(SLA)やソリューションの完全性も考慮に入れているからである。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Research/20090306/326066/
日本はもともとIT投資費が異様に高く、
またシステムインテグレータという独特の仕事が生まれていたりする。
(この歴史についてはそこまで詳しくないので違っていたらすみません)
不景気になると真っ先に削られるのは広告費だと言われている。
だけれども、こういった比較的安価で利用できるSaaSやPaaSなどのサービスを利用することで
まずIT投資費を削減することが出来る。
(投資費を削っても効率的に活用することが出来るのならばそのほうがいいと思う)
その削減して浮いたお金を広告費として活用して欲しいなと思うわけです。
でも、こんな提案を広告の営業で出来るのかなぁと思ったり。。
クラウド・コンピューティングの本がここ最近ものすごい勢いで出ているので、
そういった空気感みたいなものは出すことが出来るのかなと思ったりする。
いろいろ考えることが多い本でした。