PayPerPostのはなしについて自分なりのまとめをしておく

今回はGoogleが自らの新サービスのプロモーションに行うにあたって、
PayPerPostを利用していたことをユーザーから指摘があった。
その後、Googleは自らのプロモーション方法について謝罪し、
Google Japanのページランクが9から5に下落、
CyberBuzzはFAQを変更したことでいろいろ槍玉に挙げられという感じ。
この一連の話題で問題になったのは、
・そもそも、PayPerPostとは何なのか?
・こういったことが起きた後でもPayPerPostは有効なのか?
・PayPerPostって広告と言えるの?
とかとか。


こういった一連のことに関して考えた時間は長かったし自分なりにまとめをしておきたいと思った。

危機管理に関する対応について

今回、まずひとつにはインターネット上の危機管理の問題がある。
その後の議論の中心ではないのでさらっとまとめる。
インターネットでの謝罪でのポイントなのかなと思ったのは、
利用者・見ている人が不審に思うような無断変更を行わないことだと思う。
記録が残りにくい場面で言い回しを少しずつ変えていっても気がつかれないことは多いかもしれないが、
デジタルの世界では記録に残ってしまう。
いい方向の変更であっても、無断で(過去の記録を残さずに)変更するとなぜ変更したのか?という
疑惑の目が向けられることとなり、その対応だけで時間が取られてしまう。
こういった危機に直面したときの対応について、

クライシスに直面した際の対応には、三つの鉄則がある。「クイック&オネスティ(迅速に、正直に)」「指揮命令系統と広報窓口の一本化」「レコードマネージメント(記録する)」である。
東英弥、統合型ブランドコミュニケーション、2007、p287

こういった鉄則から考えると、変更する必要があるようなリリースをしたこと事態が問題で、
平時から自社のビジネスがPayPerPostという関連で問題が起きたらこういった対応をする。
で、その対応はネットを利用している人たちに受け入れられるような対応なのか、
チェックしておく必要があるように感じた。

PayPerPostの定義問題

いろいろ読んでいて、PayPerPostの定義は何か分からないみたいなことが話題になっています。
AMNの代表をされている徳力さんも
「私が考える、お金をもらった「クチコミ」と、製品をもらった「クチコミ」の境界線」という記事で
どこまでをPayPerPostなのかという話を様々な分類で説明しています。


でも、その線引きの間の商品を考えることは出来るのだろうし、個人的にはなんだかなと思うところでした。
個人的には製品・サービス、金銭の提供があった記事に関してはPayPerPostなのかなと思います。
PayPerPostという名前通りの定義が一番わかりやすいと思います。
どこまでが提供か?という点についてはこれから書いていく中で書きたいと思います。

広告としてのPayPerPostのはなし

そもそもPayPerPostは広告なのか?という話が話題に挙がっている。
これは自分なりに分類してみた。(代理店の業務的な分類)

コスト4マスメッセージコントロール
広告
PR× ×
販促×
クチコミ×××

広告はメディアにお金を払って枠を購入することで自分の伝えたいメッセージを載せる手法だと、
分類することが出来ると思います。
(ここでのメディアは4マスに限らずということにさせてください)
では、PayPerPostはどうなのかといえばお金は払う。ブログというメディアの枠を買うため。
しかし、メッセージのコントロールは出来ない。
自分たちの商品・サービスのいいところだけ書いてもらうわけにもいかないし、
ブログを書いている人に全て委ねられている。


そういった面で考えると、PRのような手法のように感じるが、
PRだって出来るだけ自分たちが伝えたいような記事になるように記者の人たちに情報を与えるわけで、
PRでいう「メッセージのコントロールが出来ない」ということよりも無責任な感じが個人的にはする。


PayPerPostは広告としてはメッセージがコントロール出来ない点でかなり中途半端だし、
PRでいうペイドパブリシティとして考えるにもその他の手法と比べると(個人的には)見劣りする。

PayPerPostの記事はクチコミとして有効なのか?

これについては、有効ではないと考えている人の意見を本で読むことが多かったように思います。

ここで覚えておいてほしいのは、商品を買っていない人たちに商品を評価させると、大半は採点が甘くなるということ。広告会社ではマーケティングの調査ををかける際、商品を配布したり、その場で試食させたりして評価を聞くが、実はそれでは正しい評価は出てこない。貰ったモノに対して、思い切り悪い評価は下しにくいという心理が働くからだ。つまりこういう調査は本当の意味での消費者調査とはいえずあくまで、生活者調査に過ぎないと考えて良いだろう。しかし、調査データはほしい。この辺りがマーケティング調査の難しいところである。
吉良俊彦、ターゲットメディア・トルネード、2007、p68

これはマーケティング調査についての文章だけれども、
いろいろ言葉を入れ替えるだけでPayPerPostのことを言っているような文章としても考えられると思う。
自分が言いたいのは無料でもらった製品・サービスについて書かれる記事は、
本来製品・サービスがもっているいい点しか書かれにくい。
それを参考に購入したところがすごく大事なダメな点を発見した場合、
いろいろと問題が起こりますよね?という疑問がある。
もうひとつ引用。

顧客から販売のプロセスに参加する許可を得たら、彼らに金銭的報酬を与えることなく、何らかのカタチで感謝の気持ちを表す必要がある。金銭的報酬は、二つの理由ですすめられない。金銭的報酬があることで、まず見込み客に製品をすすめる顧客自身の信頼性を大きく損ねてしまう。また、顧客も補修目当てになり、客観性を保てなくなってしまう。新規顧客を獲得できたか否かにかかわらず、顧客に対する感謝の気持ちを表すべきだが、それを買収しているように見えてはいけない。
マーシャ・ターナー、このマーケターに学べ!、2002、p101

PayPerPostとは顧客と企業との関係性を結ぶまでの流れが大きく違うことについての文章だけれども、
金銭的報酬があると記事の有効性に疑問があるということだ。


一時的に、ブログでの露出量は多くなるかも知れないけれど、
いいことばかり書いてあるような記事を見ると「これ本当かな?」という疑いの目を持つことは
多くなるような気がする。
インセンティブがあってかいている記事は自分で買った製品のレビューに比べると、
その辺りのバランスが悪くなると思う。


あと、一言付け加えておけば、百歩譲ってPayPerPost=クチコミかもしれないけれど、
クチコミ=PayPerPostではない。
こんな定義をしたら、ものすごくクリエイティブなキャンペーンを実施して、
クチコミを発生させているような人たちにとても失礼だと思う。
クチコミ=PayPerPostみたいな議論になっているのはちょっと悔しい。

消費者からの視点

ぶっちゃけ読者として期待を裏切られなければ、裏で金銭授受や便宜供与が行われていたって別に構わない。例えば著名なアルファブロガーが出版社から薄謝をもらって書評を書いたのだとしても、相変わらず爽快に弾言している分には誰も怒らないし炎上もしないだろう。GoogleがPPPと認定したサイトのペイジランクを落とすのは、それがアンフェアだからというよりは、利用者からみてノイズだからではないか。結局のところ読者が「ちょっと不自然だよね」と感じた時に「それはおかしい」「期待を裏切られた」という印象に至らないためのエクスキューズが必要とされているのだ。
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20090227/womj

こういった意見があったりする。確かにこの部分に関しては概ね賛成。
では、読者の期待とは何なのか?でいえば、自分にとって役立つ記事であるはず。
上記に書いたような理由から、
PayPerPostからは「役立つ記事」が生まれる可能性は限りなく低いように感じる。


消費者に役立たないような記事をお金を払って量産することに何の価値があるのだろう?
という話になってくるような気がするが、そこでいわれるのはSEOとしての効果だったと思う。
ただ、それも一連の騒動でCyberBuzzのサービスを利用していた人たちのページランク
一時的にではあるが低下するといった事態が発生したことで声高に叫ぶことは難しいように感じる。

広告主側のはなしと、こうしたらいいじゃんという提案

広告主側はテレビの広告も効きにくい、新聞も効きにくい…といった広告が効きにくい状況で
何とか商品を売りたいと思って、こういったインターネット広告の中のひとつであるPayPerPostにも
広告を出稿しているのだと思う。


マス広告がダメだから、ネットにも広告出したのにそれもダメなのか!ではなくて、
もっとこの広告のメリット・デメリットを考えて組み合わせていかないとダメですよ、
ということだと思う。
広告主に広告についてもっと考えてもらうような機会が必要だと思う。
(今でも多くの時間考えていると思うけど、どうしたらいいんだろうな。)


で、PayPerPostに関する自分なりの提案。
実は上記でした引用の一部には続きがあって、

感謝のカタチとして、見込み客に製品を紹介してくれたらクーポンや割引をプレゼントする、無料でより充実したサービスをうけられるようにする、無料アップグレード、低価格のモノやサービスなどを提供する、といったことが考えられる。
マーシャ・ターナー、このマーケターに学べ!、2002、p102

善意でレビューを書いているようなブロガーの人たちに対して、
もっと手厚く御もてなしをしたほうがいいと思うのですよ。
PayPerPostで使っている分の広告費(販促費)をいい意見を書いてくれているブロガーの人たちへの
感謝のカタチとして使えば、もらったブロガーは嬉しくてもっとその企業のファンになるし、
その輪は周りに伝染していくと思う。
実際にどうやってやるのか?という話はなかなか難しいと思うのだけれども、
(メールアドレスを公開している人にはメールを送ればいいし、コメント欄に書くとか?)
こういった今いる購入者を大事にするような手法のほうが大事なように思う。


ということでかなり長くなってしまったけれど、
2月の後半はこのことをどうやって自分の中で整理するかで頭がかなり使われた。
これでかなりすっきりした。最後まで読んでいただいた方ありがとうございます。