ナシーム・ニコラス・タレブ「まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」
去年出た経済書(?)の中でも良い本だということで購入。
ただ、読み進めるのにものすごく時間がかかった。
正月に買って読み始めて読み終わったのが昨日って1ヶ月以上かかってる…。
作者の方針により、自分の考えを裏付けるようなアカデミックな引用がほとんどない、
結果的に本の方向性もどっちらけみたいになっているので読みにくい。
結果的に何が言いたいんだ?みたいなことは頻繁に起きるし、
それその前に言ったのと同じじゃない?みたいなこともたくさんあったように思う。
饒舌なところはものすごく饒舌だけど、たぶん考えが足りていないところはすごくあっさり。
そして、ときどき感情的。
タレブというひとりの人間が考えたことをただそのまま本にしているので読みにくい。
(最初、訳が変なのかな?と思ったけれど、そうでもないようだ)
ただ、その読みにくさを差し引いてもとても面白い本であるように思う。
ここ日本では株で一儲けした人を見つけては、
その人が儲けた投資方法を本にして販売するビジネスがまかり通っている。
でも、そんなのは株に投資している人の数が多ければ一定数は出現するとタレブはいう。
確率の問題だと。
つまり、勝つか負けるか2分の1の出来事を何度も勝ち続けていった人は
たった数年(多くは3年ぐらいだと思うけれど)のスパンでは当然登場しうる。
そういった人は自分たちの法則を誇らしげに自慢したりして買っているときには自分の実力で、
負けて大損したときには運が悪かったと嘆く。
ここまでで分かるとおり、(たぶん短期の)投資家が成功するかどうかは
運の問題であって、実力の問題ではない。
言い方を変えれば実力なんて何もなくても、運で勝ち続けることは可能ということ。
また、メディアについてもこの本では何度も言及をしていて、
気に留めるほどのことでもない「ノイズ」についてあたかも理由があるように報じている
こういったメディアのあり方にいらつきを見せているのが印象的。
また、こういった過去について偉そうに講釈を垂れる人はいても、
未来を予測して大儲けする人はほとんど(全く?)いない。
エコノミストの過去の解釈は「正しい」としても、
新年なんかにやる年間の予想が当たらないのもさもありなんといった感じ。
僕は投資をしないからその部分についてはほとんどわからないけれど、
自分の「たまたま」うまくいったことを自分の実力だと考えて驕らずに、
運がよかったんだな!次も懸命に頑張ろうと思う気持ちが大事なのだな。
と非常に分かりやすい解釈をしました。
金融業界に進んで投資の仕事をしたいという人は必読だと思います。