ジョアン・シェフ・バーンスタイン「芸術の売り方―劇場を満員にするマーケティング」

渋谷のブックファーストで見かけて以来ずっと気になっていた本で、
だけども2500円と高いからずっと買うのを迷っていて…。

芸術の売り方――劇場を満員にするマーケティング

横浜市の図書館にあったので借りることが出来ました。図書館バンザイ!


内容としては、オペラやクラシック、演劇といった劇場型の芸術に
マーケティング的視点を取り入れることで、
縮小している芸術市場でも収益を向上させることが出来るという内容。
芸術分野はアーティストの表現したいものVSマーケティング(大衆に寄る)
という図式になりがちでマーケティングとの親和性が低いように思われるが、
そんなことはないと証明するための会心の1冊になっている。


この本のターゲットはこういった芸術分野で売上を上げたいと思っているような人になっている。
そのため、マーケティングの考え方をとても簡潔に書ききっている上に、
マーケティングの本の中でもかなり有名な本から重要な部分を引用することで
説得するような構成になっている。
僕個人はこの構成がとても気にいっていて、
この本からマーケティングを勉強してみようと考えた人にとって、
とても親切なマーケティング理論の本のリストが出来上がるはずである。
また、マーケティングの考え方についても
かなり神経を使って選ばれているなぁという印象を受けた。


また、現状の芸術ビジネスの問題点を極めて具体的に紹介し、
その問題点に対してマーケティングからのアプローチと実際の事例を用いて
これまた具体的に解決方法を示す。
芸術分野にどれだけマーケティングのアプローチが浸透していないのかがよく分かるし、
まだまだ芸術ビジネスも伸びる余地があるなぁと感じられた。


マーケティングの用語について知らないと読み切るまでにいくらか時間がかかるとは思うが、
わざわざネットで用語を検索しながら読む必要がないほど説明がしっかりなされているので、
前に立ち返るだけで事が足りてしまうだろう。
今まで読んだマーケティングの本の中でも、
マーケティングに初めて触れる人にプレゼントしたい本No.1かもしれない。


ただ、タイトルのせいであんまり売れてないんじゃないかなとは思う。
芸術の売り方だとマーケティングよりの人はあんまり買わないような…。
原題は「Arts Marketing Insights」なので、
アートビジネスを行う上での消費者インサイトを考える本なんですよね。
なので、マーケティング初心者じゃなくても「芸術」という分野をケースにした
消費者インサイトを考える本としても読めるわけです。


日本の歌舞伎なんかもどちらと言えば衰退産業だと思うし、
この本を参考にどうすればいいか考えると面白いのかなぁと思ったり。
もし、自分が本の編集をすることがあったらこういう本を作りたいなぁと
率直に思うような本でした。