濱野智史「アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか」

Wired Visionでも連載をなさっている濱野智史さんが本を出版。
編集者の仲俣暁生さんのブログで紹介というか読んだ感想が書いてあったので、
興味を持って買ってみた。
アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか
読んでみてまず思ったのは、触れるべき論点を触れているとても整理された本だなぁという印象。


この本を読んでこれだ!と思ったのは、
第六章の「アーキテクチャはいかに時間を操作するか」だろう。
twitterとニコ動とSecond Lifeを取り上げて時間の同期/非同期という切り口から、
なぜ成功・失敗したかを分析しているのがとても説得力があったように感じた。
昨日話を聞きに行ったThe New Context Conferenceでも、
2006年まではsocial webが主流だったが、2007年以降はInstant web、
つまりいつも友達と繋がっているというのが主流になるといった内容のプレゼンをした方がいました。
個人的にはリアルタイムで繋がりあるのはなかなか難しいので、
同期性を持ったサービスであることがポイントになるように思いますが。


で、これで納得するだけならばそんなこれだ!とは思わないわけですが、
こういったサービスが出ている状況で既存の媒体はどうサバイブしていくかが問題になるように思います。
ここで仲俣暁生さんのブログから引用すると

出版関係者がこの機会に読んでふりかえるべきなのは、出版界の時間把握の大雑把さだ。書籍は書籍でいろいろな問題があるが、ここでは雑誌に限る。「日刊紙(誌)」「週刊誌」「月刊誌」「季刊誌」「年刊誌」といった定期刊行物のサイクルは、いまどの程度の妥当性をもっているのだろう。これらは基本的に、「雑誌は同期メディアである」という考え方に立っている。でも、雑誌がもつ「同期性」の半分は「歳時記」的なもの、つまり毎年そのシーズンになると必要となる情報や話題である。これらはすべて、ネットに移行して非同期化=アーカイブ化できる。
http://d.hatena.ne.jp/solar/20081104#p1

明らかに同期メディアではない雑誌があたかも同期メディアであるような顔をして現れても、
そこに発生するのはシラケというか、え?今さら?な感じしかない。
インターネットが猛烈な勢いでネタを消費していった後には何も残らない。
この同期/非同期という切り口で雑誌メディアを考えるとかなり生き残りが厳しいように感じる。
本当にどういった雑誌なら生き残り得るのか考えないといけないなぁ。
(明らかに他人事ではないことなので、ちょっと頑張らないと。)


あとは、恋空についての分析をケータイを媒介とした心の動きで分析したのが興味深かったです。
突然、ゼミの先生の名前が出てきたときにはびっくりしたけど。
(というか、ゼミ4年目なのに未だに先生の本を読んでないのはヤベーかもなー。)
ケータイと人との関係という切り口で見ると心情描写がうまく出来ているのかも?
と感じ、なぜか無性に読んでみたくなりました。
(でも、ケータイで読むのと本で読むのとでは微妙に内容が削られたりしてるんだよね?)


情報環境論には明るくない自分でも読んでだいたいのことが理解は出来ました。
この本で言及しているいくつかの本については在学中に読まないといけないなぁ
と思うわけで、情報環境をこれから勉強する上での基点になる本だと感じました。