ジェフリー・サックス「貧困の終焉―2025年までに世界を変える」
今日はBlog Action Day 2008らしいです。
Blogを通じてみんなで同じテーマについて記事を書くという日。
今年のテーマは「貧困」。
普段はあまり考えていないテーマですが、
たまたま昨日読み終わった本がまさにこのテーマにぴったりだったのでその本感想で
Blog Action Day 2008に貢献したいと思います。
著者のジェフリー・サックスはアメリカの経済学者ですが、
ボリビアやポーランドの経済危機を救ったというすさまじい経歴の人でもあります。
その経済危機を救った様子についてはこの本で書かれています。
まず何よりもすごく読みやすいです。
貧困問題の総論→国ごとの各論→アメリカの対策等々という流れで進んでいくので
どういったことが起きているのかを理解しながら読み進められるのがいいですね。
この本を読んで改めて感じたのは、
世界の貧困の原因を「グローバリゼーションのせいで格差が広がった」とか
「アメリカが資本主義を無理矢理押し付けたからだ」と一言ではとても片付けられないことだと。
序盤では、バングラデッシュの女性が低賃金・長時間労働という先進国から見れば不当な条件でも
自分で使える賃金を得たことによって個人の自由を得たことが書かれている。
グローバリゼーション賛成論の人はこの点を強く押し出す。
世界中に工場を作って、安い賃金でもいいから雇用を作り出すことで救われる人たちがいると。
反対論者はNIKEの靴なんて買わないなんて不買運動を起こす。
個人的にはこれで救われる人たちが確実にいるのだからグローバリゼーションありだと思う。
この本での表現をすれば「極度の貧困から抜け出す梯子の第一歩」に成り得ると思う。
また、貧困の国に対して政治の腐敗や治安の悪さがとかいうだけの批判も間違っていることがわかる。
それもひとつの原因だろうが、それが全てではない。
この本では目指したとおりの経済成長が望めない原因として数多くのものが書かれている。
貧困そのもの、自然地理学、多額の負債、政策の失敗、文化の壁、地政学的要因、
新発明の不足、人口の増加などこれらのものが複雑に絡み合っている。
こういった視点が出てきたのはこの著者がポーランドやボリビアなどの国で実際の政策に関わり
現地でしっかりと調査した末に辿りついたことだと思う。
どういった病状で貧困が起きているのかを判断する臨床経済学が必要だと唱える。
それと比べるとIMFの対策のパターンの少なさは呆れるばかりである。
本当はIMFがこれをやるべきなのになぁ。
(この問題について詳しくは「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」を読むといいような)
僕が個人的に気に入ったのは、最後にある「私たちの世代の挑戦」という章の初めの文だ。
ジェファソン、アダム・スミスといった哲学者の思想が
どうやって今の世界に結びついていて、この思想を自分たちの手で前に進めていく必要があると
力強く書かれている。
ここまで世界に対して真っ直ぐな姿勢で立ち向かおうとした人を初めて見たかもしれない。
そう考えると、自分の勉強はものすごく片寄っているなぁ。
貧困の原因とそれが解決されない理由について知識を得るには素晴らしい本だと思う。