わたしたち消費、読みました

本自体はペース落としつつボチボチよんでいるのだけど、
いかんせんここに書くようなものがなく久々に。

「わたしたち消費 カーニヴァル化する社会の巨大ビジネス」ということで、
テーマとしてはいわゆるマスコミが煽らなくても売れたヒット商品ってあるよね。
(この本が誰をターゲットにしているか分からないのが難点ですが、たぶんおじさん?)
過去にヒットしていたものってどういう流れで発生したの?という疑問から、
今はどういう流れでヒット商品が生まれるかというのを前半で解説して、
最後は電通ならこんなことできます的な宣伝を行って終わりという本。


この本については語るべき点はやはりたくさんある。
その中の一つの疑問として、そもそもなんで鈴木謙介電通と組んで、
カーニヴァル」を起こして若者を刈り取るためのノウハウ本と取られ兼ねない本を出す必要があるのか?
というものがある。


それに対して、鈴木はまえがきによせてのパートで以下のように書いている。

かねてから私は、自分の書いたものが、お金儲けをしたいと思っている人にも役に立つものでなければ意味がないと考えていました。インターネットや若者の行動・心理を通じて、今の社会はどういうことになっているのかについて分析をするのが私の主な仕事ですが、頭の隅には常に「読者はここからビジネスのチャンスをくみ取ってもらえれば嬉しいな」という思いがありました。
「わたしたち消費 カーニヴァル化する社会の巨大ビジネス」 P4

この文章を読むと、自分が出す本はビジネスチャンスを見つけるきっかけになればいいから、
電通と組んで出そうがそこが重要な点ではないというように考えることが出来る。


ただ、その考えで回答になる可能性のある疑問もあって、
果たして鈴木はこの「カーニヴァル」を起こす仕組みを使って若者を絡め取られることに対して
どう考えているのかというものだ。


そもそも、このカーニヴァルという言葉自体、鈴木の「カーニヴァル化する社会」の中で登場し、
若者が共同性を持って高揚していく状態を表した言葉で、
本を読んだ限りではいわゆる若者論としての切り取り方にしか感じなかった。
それに加え、どちらかといえば自主的に立ち上がってくるものを事例に使っていたことが多く、
資本・消費活動とは遠いものとしての紹介という印象が強かった。
それを今回の本のようにカーニヴァル発生をマニュアル化することの意味がうまくわからなかった。
確かにビジネスには使える。
ただ、それは資本が仕掛けたカーニヴァルでも楽しければいいじゃんなのか、
資本が仕掛けたカーニヴァルに取り込まれるやつなんてタダの猿というスタンスなのか、
その辺りがどうも見えないしはっきりして欲しかった。


ということで、ビジネス的に使えそうな部分だけ箇条書きで。

  • 「<わたしたち>の連帯感を生むきっかけ」

「わたしだけが知っている」状態から、「わたしたちだけが知っている」状態へと変化させ、
その「わたしたち」というコミュニティで消費されるネタを投下し続ける。

  • わたしたち消費のサイクルを企業が回すために気をつけること

1.キーパーソンの重要性、
2.ネタ的コミュニケーションを醸成するプラットフォームを消費者に提供する、
3.企業の側がネタの提供者になり、協力者となる、
4.コミュニケーションの基礎となっている文脈を流行の拡大に応じて書き換える、
5.消費者をお客として切り捨てずに仲間として手を取り合う


読みやすくてわかりやすい本でしたが、この本を出す必要性だけはよくわからなかったという感じ。
そういうのを気にせずに読む文にはサクサク読めてよろしいかと。