!!!(Chk Chk Chk) 「THR!!!ER」

前作のリリースからこの新たなアルバムが出てくるまで3年。その3年の間には大きな変化があった。ディスコ・パンクブームの火付け役だったLCD SOUNDSYSTEMは解散し、ハウスビートを取り入れたThe Raptureの新作は静かな反応で終わった。また、海を跨いだイギリスでは、Bloc Partyのアルバムが酷評された。ディスコ・パンクという言葉自体が死語となり、シーンは完全に沈静化した。それは、数年に一度訪れる新人バンドの不作の時期とも重なっていた。

リリースされた!!!の「THR!!!ER」はそういった状況のことは全く考えていなかったかのように、今まで通りでありながらより洗練されたビートを叩き出す作品になっている。1曲目の「Even When The Water's Cold」は、これはFranz Ferdinandの新曲か?と思うほどのセクシーさ。!!!ほどセクシーという言葉が似合わないバンドもいないだろう。youtubeで検索し見てもらえばわかるが、なんせ今まではライブになればボーカルがTシャツ短パン姿で汗だくになりながら歌い、煽る。曲もセクシーとは言いがたく、固くゴツいベースとドラムを刻んでいく。とにかく男臭く汗臭く土臭いバンドだったのだ。

そういった男臭さはベースとドラムのとんでもない密度から生まれていた。だが、その密度が少し薄れ適度な隙間が生まれた結果、誰が聞いても!!!のサウンドでありながら、セクシーでファンキーであるという新たな境地を開拓することに成功している。今作「THR!!!ER」というタイトルは自分たちにおけるマイケル・ジャクソンの「THRILER」を目指したものだとインタビューで語っている。その目論見通り、今までより多くの人が踊って楽しめる曲が詰まっている。このアルバムはこれから出てくる新しいバンドを受け入れるための土壌を切り開いていくだろう。