アルゴ

 「アルゴ」は1979年にイラン革命の最中に起きた「アメリカ大使館人質事件」の発生と、人質になる前に大使館から脱出した6人のアメリカ人がイランから脱出するまでを描いた映画だ。
この脱出に関する話は、実話が元になっていることが映画が開始してすぐに観客に伝えられる。

 イラン革命アメリカが関与したことで、イラン国内のアメリカ人への反感や暴行は最高潮に達していた。その状況下で、人質になることから逃れた6人を救うために、CIAが考えた作戦がだされた作戦は砂漠の国をモチーフにしたSF映画「アルゴ」を制作するというものだった。


 この「アルゴ」を監督しているベン・アフレックは今作でも主役兼監督を務めている。「今作でも」というのは、彼が監督した前作「ザ・タウン」でも主役と監督を務めているからだ。
 前作「ザ・タウン」ではベン・アフレックジェレミー・レナーの、俳優としての魅力を引き出すことによって話を引っ張っていた。それは各俳優の「見た目」の魅力というべきもので、ベン・アフレックの優等生感やジェレミー・レナーのどこか全面的には信用の出来ない感じを活かしたキャスティングによって、観客は違和感なくストーリーを受け入れることが出来た。
 しかし、今回の「アルゴ」では、ベン・アフレックが自分の俳優としての魅力を捨てた。彼が演じるのは、6人を救出する作戦の指揮を取るCIA職員。長髪でモミアゲからアゴまで髭の生やした、優等生にはほど遠い姿だ。自らの俳優としての魅力を限りなく押し殺し、脱出劇に注力した結果、「アルゴ」は俳優 ベン・アフレックよりもドキドキハラハラするストーリー展開を強く印象づける作品に仕上がっている。

 ベン・アフレックは前作の監督と主役を兼任するスタイルから、一部では「クリント・イーストウッドの後継者」と評されていた。そして、今回の「アルゴ」によってその評判は更に多くの共感を得ることだろう。