Rob Graham「生き残るための広告技術 進化したインターネット広告「行動ターゲティング」のすべて」

本屋だと、銀色の帯がギラギラと光っている行動ターゲティング広告本。
生き残るための広告技術 進化したインターネット広告「行動ターゲティング」のすべて
DACの方が翻訳しております。
事例でYahoo! JAPANmixi、ワコール、スバル、NIKKEI NET、Edyを出しているビットワレットなどが
出ております。


行動ターゲティング広告自体は効くことは十分にわかっていましたが
今回はその背景となっている部分について大変勉強になりました。
ただ、それだけだと普通の宣伝本ですが、
この本がいいなと思うのは、マーケティングの理想の部分が多く書かれている部分かなと思います。
いくつか引用してみたいと思います。

あなたと私は異なる人間である。しかし長い間、私たちは同じ広告を受け取り、同じ広告の露出を異なる機会で受けてきた。これは意味があるだろうか。
新しい世界において効果的であるためには、広告主は「私たち」をターゲティングすることはやめて、「私」をターゲティングすることを始めなくてはならない。(p30)

こういった「水溜りターゲティング」の手法は、ニーズが普遍的な場合のみに有効である。しかい実社会においては、私たちはめったに同じ経路をたどることはない。確かに、スーパーマーケットには同時に多くの消費者が来ているが、全員がマヨネーズを買うために同じタイミングで来たということはあり得ないのである。(p47)

といったところが個人的には気に入っています。
どちらかといえば刈り取り型の広告ということはわかっているんだけれども、
こういった広告費が削られている中で効果を上げるという観点で見れば有効かなと。
というよりも、今までのCMとかそういった広告が大雑把過ぎた部分があるんだと思いますが。
当然、その大雑把さが今まで興味を無かった人たちを巻き込む大きな力になっていたと思います。


最後に佐々木俊尚さんも書いているのだけれども、
昔とは決定的に消費のスタイルが変わっているというのはあるわけで、
それでも大きなストーリーを描きやすいCMが効くのかはうーむと思うところ。
映像で多くの人に見せることが…みたいなメリットしか思いつかないんだよね。
(いや、それが他のメディアにない一番大きなメリットだろうがよと言われれば終わりなんですが。)
と、この本を読み終わったところでこの本絡みのニュースがちらほらと。


・広告に対する意識調査--約70%のユーザーは行動データの収集を迷惑に感じている
http://japan.cnet.com/research/column/webreport/story/0,3800075674,20401950,00.htm

何か目的をもって行動している時に広告が表示されたらどう思うかを尋ねた。その結果、71.4%のユーザーが迷惑だと思う(「迷惑だと思う」と「少し迷惑だと思う」の合計)と回答した。

70.8%のユーザーは「メリットのある広告の為とはいえ、個人の行動を記憶される事には抵抗がある」と回答した。

ということで、いくら行動ターゲティングといえども、
その中心となる情報の収集の部分でまだまだプライバシーの問題をクリアできない。
それ以外にも、いくらマッチしている広告でもタイミングがかなり大事だと。
目的を持ってネット見ているかどうかなんてさすがにわからないだろう…。
この辺りにも超えないといけない壁があるみたいですね。


ミクシィ 、4〜9月期業績を上方修正 モバイル広告好調
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/21/news076.html
とはいえ、この本の事例で出てきたミクシィは広告が好調とのこと。
mixiアプリで滞留時間がかなり増えているとのニュースも出たばかりなので、
更なる上方修正が出そうな気もしますがどうなんでしょうか。


ということで、効果はわかっていてもうまく機能するまでに壁があるわけですが
ミクシィみたいに使っているうちにデータ取られていたりだとそこまで気にならないので、
広告も機能しやすいということなんですかね。
今後の広告トレンドのひとつなので、チェックしておいて損の無い本だと思います。