マーティン・リンストローム「買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界」

現在、マーケティングへの心理学や脳科学からのアプローチに魅力を感じているわけですが、
去年発売したこの「買い物する脳」も当然気になっていました。

買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界

地元の本屋ではなかなか大きく取り上げられていて話題になったのかなと思いきや、
amazonではレビューが二件しかなくそれなりな盛り上がりだったようですね。


原題は「buy・ology - Truth and Lies About Why We Buy」ということで、
直訳すれば、「購買の論理、私たちがなぜ購入するかその真実とウソ」といった感じでしょうか。
これがニューロマーケティングの世界となると急に胡散臭くなるのがなかなか不思議。
直訳の通り、本の内容としては消費者インサイトを探る本で
これを「脳スキャン」という手法で集めたデータから解析してみようというのがこの本の新しいところ。


結論から言えば、今まで迷信のように効くと言われていた広告手法が意外と効かないことがわかったり、
消費者がものを購入するときにこんなことまで考えているのではないか?
という疑問を立てる部分までたどり着いた本であるように感じる。
もちろん読む人によっては、現状のマーケティング・リサーチに対する反論本であるように感じると思うが
それは心理学や脳科学からのアプローチで行うと毎回触れざるを得ない論点であるのかなと思う。


ジャーナリズムやらメディア論やらを勉強していた自分にとっては、
今後のテレビを使ったプロモーションのひとつがプロダクト・プレイスメントかなと思っていたので、
それについて記述があった章(2章)は楽しく読めた。


なぜプロダクト・プレイスメントなのかといえば、
HDDレコーダーやアメリカで言えばTiVoの普及でCMカットで録画されCMがどんどん見られなくなっている。
そうすると、CMの視聴回数は減り効果が薄くなるので番組内でプロモーションを行いたい。
そのひとつの方法が番組内で商品を見える形で使用してもらったりする方法である、
プロダクト・プレイスメントなのではないか、という考えですね。
で、結論だけ言ってしまえば、プロダクトプレイスメントも無条件で効くわけではなくて、
ブランドイメージやマーケティング的に一気通貫している必要があるという条件付きで効くようです。
(番組のイメージと商品もしくは企業イメージの一致ということですね)


その他にもブランディングの視点で考えれば、「ソマティック・マーカー」というキーワードは
なかなか重要であるように思うし、
マーケティング・宣伝広告という視点で見れば「五感マーケティング」やセックスアピールによる宣伝の章は
とても参考になるように感じる。


なぜモノやサービスにお金を出してしまうのか、完全な解はもちろん明かされてはいないけれど
その解に近づくためのキーワードや考え方はちりばめられていてとても参考になった。


買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界
マーティン・リンストローム
早川書房
売り上げランキング: 1601
おすすめ度の平均: 3.5
3 脳科学からマーケティングを考える一冊
4 広告に関わる全ての人たちに。 コミュニケーションを行うすべてのひとたちに。