佐々木俊尚「ブログ論壇の誕生」

ゼミで参考文献を使いながら「ブログはジャーナリズムか?」みたいなテーマで議論をしている。
ちょうどいいタイミングだなと思い、併せてこの「ブログ論壇の誕生」も読んでおこうと思った。
ブログ論壇の誕生 (文春新書 (657))
読んでみるとわかるのは、かなり大げさなタイトルだなという感じ。

しかしながらインターネットの論壇は、この分断された公論の世界を、ふたたびひっくり返して底からかき混ぜてしまう可能性を秘めている。先ほどのコーヒーハウスでの討論の基盤を、もう一度見直してほしい。
社会的地位の度外視、タブーなき言論、参加のオープン性。
これはネットの論壇が持っている内在的な性質と、実はまったく同じものだ。
(p14)

ということで、ブログによる論壇の場を著者の佐々木さんが期待しているのが分かる。
ただ、読んでいくとこの論壇がうまく機能する場面がどうも限定的である印象を受ける。
それは、いわゆるロスジェネ世代と既得権益世代の意見が相反するとき、
もしくはロスジェネ世代が自分たちにとっての仮想敵を見つけたとき。
そのふたつに限られるのではないかと感じるのだ。


「マスメディアのプレゼンス低下」や「ブログ論壇的追求スタイル」などは
なるほどと思うところではあるけれども論壇の誕生とはそこまで関係がある事例ではない。
というか事例ベースなので、各論で語るべき匿名・実名の話や責任の所在の話などが
(事例というか雑誌の連載をまとめたものなので、話に流れがない。)
丁寧に論じられていない印象を受けた。
オチもかなり不満。
ここでもロスジェネ世代を原因のひとつとするのはひどいと思った。
最後まで読めば、まだまだ論壇というのには障壁があるように感じる。
が、それでも「誕生」とタイトルで言い切ってしまうのはある意味すごい。
amazonで評価の高い本もあるみたいだが、とても読む気がしなくなった。


書き始める前はこんなに不満を書くはずじゃなかったのに、なんでだろ…。
不快な思いをさせてしまったらすみません。