世界の“水”が支配される!―グローバル水企業の恐るべき実態


環境問題の本だと思ったらそんなかわいい本ではありませんでした。
水道民営化の海外の事例をジャーナリズムの視点で書いた本です。
読んでいて、背筋が凍ります。
この本の中で、よく出てくる企業はスエズとヴィヴェンティ・ユニバーサルの2つ。

水道民営化にはいくつも問題となる論点がある。

  • そもそも、水は商品になり得るのか?

この議論は前提のはずだけど、どの事例でも疎かになっている。
例えば、コーラは水に砂糖と炭酸を足しているだけで販売している。
であれば、水も商品になるだろうというのが肯定側の主張。
俺は、これ賛成できません。

  • 基本的に、入札制度によって委託企業が決まる

今のところ、談合はないにせよ、
企業と市や政府の癒着があった場合、水を巡るサービスがしっかり行われるか不安です。
そういう事例はたくさんの国であるみたい。

  • サービスの比較が出来ないまま、長期契約を結ぶことになる

市場社会ではありえないことのはずなんですが。
入札制度による独占契約を最初から20年とか結ぶことになる。
一度、水道を握られてしまえば水道料金から何から企業の言いなりにならざるを得なくなる。
(企業の要求を断れば、サービス停止の可能性があるため)


民営化っていうのは非常にリスキーなことだというのを僕らは認識する必要がある。
契約の要綱を抜け道がないようにあらゆるトラブルシューティングをした上で結ぶべきだし。


とりあえず、政府のおかげで僕らは飲み水、下水を安定的に安価で使えているんだということを
実感すべきだ。
実際に財政破綻した夕張市では、下水道使用料が10m3あたり1470円から2440円に値上げになった。
財政破綻が起きれば、水道代は跳ね上がる。それは、補助があるからだ。
今、日本で一番民営化が近いのは夕張市なのかもしれない。


とりあえず、水の商品化の市場がどうなっているか理解するのにもってこいの一冊。