佐々木俊尚「2011年新聞・テレビ消滅」

ある程度釣りタイトルなのは覚悟して購入。
2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)
「2011年」の部分にどこまで説得力があるかは疑問も残るけれども、
なぜ衰退しているのかについては大変わかりやすく書かれていると思います。


序盤に登場してくるフレームワークによってこの本の分かりやすさが決まったなという感じ。
しかも、これ他の人が言ってたフレームワークだしね。それでここまで本書いてしまうのはすごい。

つまりは垂直統合だ。紙面製作から印刷、流通、そして配達までがすべてひとつの新聞社の中で統合されているわけだ。
グーグルの及川卓也氏は、これを「コンテンツ」「コンテナ」「コンベヤ」という三つの層(レイヤー)にわけて説明している。(p31)

この「コンテンツ」「コンテナ」「コンベヤ」のモデルは最後まで何度も出てくるし、
とても分かりやすいフレームワークであると思う。
結局のところ、新聞もテレビもこの3層を独占出来ていたがために儲かっていたと言っても過言ではない。
新聞は販売店制度を(自力だか他力だか詳しくはないけれど)を作り上げたのはすごいと思うけれど、
テレビなんて電波法があるだけだからねー。


今年はアメリカの新聞社がヤバくなりすぎて、何度もGoogleとぶつかった。
自分でブログを書いていてもその話題ばっかりの時期があって、どうなるんだろうとワクワクした。
ニュースを紙でなくても読めるようになったことで、新聞社はコンテンツ屋への道を辿っていった。
コンテンツでメシを食う方法は頭のいい人たちによって何度も何度も考えられているが
自分で見ている限り「これは決定打だな!」と思うものは何もない。
全ユーザーのうち5%を有料にすれば成り立つ論みたいなものもあるにはあるけれども、
これも一人が考えたアイデアに過ぎず5%という数字は細すぎて乗っかるのには怖すぎる。
売上は下がっていく、でも次のビジネスモデルは見つかりませんって状況で
消滅するわけないじゃんと言える人はいないと思う。
この本でも今までのビジネスモデルの綻びを次々と突いていく。


今日もこんなニュースが流れていた。

TBSホールディングスは5日、2010年3月期の業績予想を下方修正し、連結純損益が従来予想の22億円の黒字から49億円の赤字になると発表した。TBSテレビ単体は09年3月期に赤字だったが、連結での赤字は初めて。
http://www.47news.jp/CN/200908/CN2009080501001013.html

不動産屋とか言われているTBSでも赤字。
テレビで稼げないから持ってた土地で収益を得ようとしてもそれだけでは支えきれなくなっている。
TBSは視聴率もトンデモなく低いし、どうするんだろうなぁと思っている。
他のテレビ局も今年は赤字決算だろうなぁと思う。
不景気によってびっくりの展開になっている。


amazonのレビューでは2011年の論拠を問う人がいるが、
佐々木さんも預言者ではないので必ず2011年とはいえないだろう。
新聞はアメリカの3年遅れで動くことが多いから2011年。
テレビは地デジによって一気に展開するから2011年。
じゃあ、「2011年新聞・テレビ消滅」でよくない?ぐらいのもんだと思う。
ここについて論拠がないよ!とか言って評価を下げている人は何なんだ?
そこがこの本の主要なところではないだろう。


ネットで日々ニュースを追っていればなんとなくフワッと知っていることは多いのだけれども
こういった本という形で読むと線が一本通る感じで非常にすっきりする。
広告関連の仕事の人、メディア関係の仕事の人は読んで損はないと思います。
どちらもお互い様なのだから一緒に考えないといけないだろうなぁと思うところです。

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)
佐々木 俊尚
文藝春秋
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おすすめ度の平均: 3.0
5 ネット時代のメディアの有り方を示唆していて有益
1 タイトルに中身が負けている
5 報道という媒体における、広告費の意味がかわった
2 要はルサンチマンの裏返し
5 よりよいメディアのあり方について考えさせられる