吉本隆明「真贋」を読んだ。

ほぼ日で糸井さんがかなり力を入れている(ように見える)吉本隆明関連のプロジェクト。
名前は知っていたものの、本は読んだことがなかった。
口述で書かれていてかつ最近出たこの本がたまたま安く売っていたので読んでみた。
真贋
なので、この本が個人的には吉本隆明デビューになるわけですね。
果たしてよかったのだろうか…。


いつもどおり本の内容で気になったところをメモしながら感想を。
細かいところはたくさんあるけれども大きなところだけ。

本を読むことに利と毒があるのと同じように、あらゆるものに利と毒はあります。たとえばお金儲けをすることにも利と毒があります。(p31)

この一文がすごくグッときているわけです。この本の最も重要な文だと思っています。
ここで言うのもあれですが、先日自分が所属しているサークルで後輩たちがいろいろ発表していました。
20分の発表でスラスラと発表していておーおーと思っていたけれどどうもしっくりこない。
そのときにこの言葉がスッと思い出された。
「あらゆるものに利と毒はある」
そう、その後輩たちは自分たちが調べていたテーマのいいところだけを発表していた。
利の部分にクローズアップすれば確かにすごいなぁと思う部分はある。
でも、その利が持つ毒の部分も伝えなければどうしてもバランス感が悪くなる。
そういった本質的なことを一言で表現しているのがすごいと思うわけです。

いまの日本は、道徳的にもよくないから、品格とか愛国心とか武士道精神みたいなものをふっかつさせようという考えからがブームになっているようです。しかし、僕はそういうことは無駄である、はじめから無駄なんだと考えています。そういう復古的ないし懐古的なやり方が、このかつてない新しい社会の状態に対して通用するでしょうか。僕は、復古的な考え方は通用しないと思っています。(p226)

この文だけ引用するといろいろ問題が起きる気がするのだけれど、あえて。
この節を読んで思ったのはこの日本にどんなOSを入れれば新しい世界に対応できるのかという問題だと。
今の日本がwindows2000だとしたら、武士道とかってOSが相当過去のバージョンじゃんと。
(この例えは以前話していてしっくりきたのでそのまま違う例でも使う。)
過去のOSを入れてもいいけど、入れたら入れたでそれなりには機能すると思う。
でも、言い換えればそれなりにしか機能しないと思う。
何で今のOSが必要だったのか?という議論がないまま過去うまくいったOS入れれば失敗がないじゃん
っていう話だと。
でも今必要なのは古いOSではなくて、もしかしたらVISTAなのかもしれないし、
もっと独自開発したものなのかもしれないしわからない。
でもそういったものを導入して対応していかないとこの新しく速い時代には対応できない。
そういうことだと思います。
ふー、ちょっとすっきり。


深く考えるのを止めたらダメだってことなんだろうな。
これ読んでほかの吉本作品も読みたくなりました。
やっぱり共同幻想論ですかね…。タイトルだけで難しそうだ。

真贋
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吉本 隆明
講談社インターナショナル
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おすすめ度の平均: 4.0
4 戦争は悪
5 時間との競争
4 調子が良すぎるときは毒が回っているらしい
4 もうちょっと考える
5 テーゼとアンチテーゼ、みたいな。