アメリカの新聞業界の痛み具合が半端ない件

昨年合衆国の新聞業界は最悪を記録した。総広告収入(印刷+オンライン)は16.6%落ち込んで$37.85B(378億5000万ドル)だったとNewspaper Association of Americaの最新の数字が言っている。つまり2007年から$7.5B(75億ドル)の減少である。印刷広告だけでは17.7%の減、三行広告は29.7%の減、オンライン広告も1.8%減って$3.1B(31億ドル)だった。
http://jp.techcrunch.com/archives/20090329the-wounded-us-newspaper-industry-lost-75-billion-in-advertising-revenues-last-year/

TechCrunchからのニュースだけれども、アメリカの新聞業界の話は去年もしょっちゅう出てて
ものすごく大変な局面なんだろうなと感じる。
と同時になんでもかんでもWEBに移行するというのが正しい方向ではないのだろうなとも思う。


なぜ、WEBに移行することに若干ネガティブになりつつあるかと言えば、
圧倒的に流通としてのチャネルの確保がしにくい点があると思う。
紙で出ていれば、お店で販売することで販売収入を得ることが出来るけれど、
WEBではそもそもサイトへの流入のために広告やPRといったプロモーション活動は必須であるし、
販売収入は入らなくなるし、広告の収入は紙のときと比べたら激減だろう。
アメリカは土地が広いからこそ多くの新聞社があるけれど、
WEBに移行してコンテンツ力勝負になるとどうしても人材とブランド力で差がついてしまうと思う。
同じ時間をかけてWEBでチェックするなら質がいい(であろう)新聞社のページでチェックしたいと思うのは
仕方がないことであるように思う。
紙でなくてWEBでやっていこうとなった段階で地域から世界と勝負することを余儀なくされるのは
大変だろうなと感じるが時代の変わり目ということなのかなと思う。


では、これが日本ではどうなるのかというのが問題だと思うが、いかんせん思考が足りていない。
この参考になるひとつの記事がロイターに挙がっていた。

ウェニグCEOは冒頭、「グローバルなメディア産業は2つの困難な問題に直面している。1つは広告収入の激減であり、もう1つはインターネット、携帯電話の普及によってオーディエンスが複数のメディアを消化していることだ。こうした変化は元に戻らないし、現在の変化は構造的な問題だ」と切り出した。朝日新聞の吉田常務は「(新聞界が)一番深刻に受け止めていることは、若い人たちが旧来メディアに必要性を感じなくなっていること」と応じた。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-37235420090330

「(新聞界が)一番深刻に受け止めていることは、若い人たちが旧来メディアに必要性を感じなくなっていること」
という発言があるが確かにその通りだと思う。
ニュースというか、コンテンツのニーズはさらに増している。
mixiだって、ポータルサイトだってニュースが配信されているから見ている人がたくさんいる。
日本でGoogleYahoo!に勝てていない理由にはYahoo!ニュースがトップにあることが
かなりの比重を占めているのではないかと思う。
ホームに戻って最新のニュースをチェックできるのは便利なのだろう。
(私はiGoogle派ですが。)
ニュースというコンテンツがなければpv数が集まらないところも数多くあるだろう。
この重要性をもう少し考えたほうがいいように思う。

インターネット上で無料でニュースが読める現状の変革が必要との声も聞かれた。読売新聞の老川社長は「米国のメディアが記事を無料にしてバナー広告で収益を狙うモデルは失敗だった。日本もそれに追随して失敗した」と指摘。その上で老川社長は、ネットワークがビジネスや生活の隅々まで浸透した中で「どういうモデルを採用したら勝ち残れるのか、われわれも考えていところ」と語った。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-37235420090330

従来の新聞は販売費と広告費で収入を得ていたわけで、
広告費が大量に入るのであればWEBに一本化も可能性はあるだろうが、
現状ではかなり厳しいように思う。
まだまだWEB広告の単価が安いためにPV数をとにかく稼がないと何千人もの雇用を確保するのは厳しい。
WEBだけで展開していくには広告のクリック数が多い記事=優秀な記事という、
価値観のパラダイムシフトが必要になるはずだけれどもまだまだそういった変化は厳しいだろう。


まず、現状で出来るのはニュースを配信しているWEBサイトに対する価格交渉力を高めることだと思う。
紙である必要性はなくなったが、ニュースのニーズを高まっていることが
今後のビジネスモデルを考える上で最も大事なことだと思った。