ジョン・マクミラン「市場を創る―バザールからネット取引まで」

思想地図のver2に座談会として「ソシオフィジクスは可能か?」というのがあって、
こういう括り方があるのか!となかなか面白かった。
その座談会の中で紹介されていた中の1冊がマクミランの「市場を創る」。
市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)
そもそもソシオフィジクスとは何ぞ?と言う人は本屋さんで思想地図を探して読むとよいと思います。

市場という言葉がこれほどまでに深い意味を持っていることに気がついていなかった。
この本で取り上げられるのはインターネット、社会主義共産主義特許権・知的財産、
オークション、自由主義インセンティブの経済学などなど。
日本の話題で行けば、今ある意味話題の建設業界についてのお話も掲載されていたりする。
インセンティブの経済学は「ヤバイ経済学」でも取り上げていたりする話題だったりします。
ヤバい経済学 [増補改訂版]
インセンティブを与えることで、貧困から脱した中国の農業の話はかなり面白かった。


そもそも市場とは何であるのかという疑問もあるが、
これはまだまだひとことでこれだと言い切れるものではないように感じた。
ただ、どんな市場が機能するのかそれについては以下のような記述がある。

うまく機能する市場のプラットフォームは、次の5つの要素を持っている。情報がスムーズに流れること、人々が約束を守ると信頼することができること、競争が促進されていること、財産権が保護されているが、過度に保護されていないこと、第三者に対する副作用が抑制されていること。この本の残りの部分において、市場設計のこれらの5つの要素がいかに実行に移されることになるのか、もしくはそれに失敗するのかを見ていくことにしよう。
ジョン・マクミラン、市場を創る―バザールからネット取引まで、p194


失敗した例に挙げられているのはロシアの例だったり、カリフォルニアの電力会社の例だったり。
個人的にはインフラの事業については市場というものは必要ないのではないかなと思ったり。
以前読んだ「世界の“水”が支配される」という本では水道会社の民営化の話があって、
民営化するとだいたいのところが失敗している事例があってこれは悲惨だなぁと思ったり。
世界の“水”が支配される!―グローバル水企業(ウオーター・バロン)の恐るべき実態
そういえば、007の最新作も水の話だったなぁ。。
市場に任せると需要と供給の関係、つまりお金が払えなくなると利用できなくなる面があるわけで、
インフラはそれじゃ困るわけです。
市場が機能するための競争の促進がなされていないだけという話なのかもしれないですが。
インフラは初期投資でかなりの費用がかかるので競争しろと言われても、
設備がそろえられないよ!って話だと思うのですよね。
そういった意味で考えると郵政公社の民営化が今さら話題になってますが、
メール文化がこれだけ定着した今日ではインフラにはなっていないわけで民営化してもいいのでは?
と思ったりします。
(預金の残高が余りに大きすぎることが問題にされているだけな気もしますが)


最後には貧困問題に対する市場というか自由主義的なものからの反論みたいなものもあったりします。
ただ、やはり自由主義といっても市場が機能するには、
ある一定の国家というか政府の介入がないといけないという考えを当然持っていたりします。


制度設計によって、人の動きが変わるというソシオフィジクスを考える上で、
確かに大変わかりやすい一冊であったように思います。
amazonでの評価もかなり高いです。ただ、値段が高いです。。

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)
ジョン マクミラン
NTT出版
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おすすめ度の平均: 5.0
5 市場設計をめぐる思想と歴史!―経済学における新たな市場理論に向けて
5 制度設計の視点から市場を読み解く
4 自由経済をよりよく発展させるための制度設計について書かれた本
5 市場は如何にして創られるのか
5 経済学にとって重要なことは何だろうか、それがわかった。