ソフィア・コッポラ「SOMEWHERE」

 ハリウッドの映画スター、ジョニーは高級ホテルに暮らし、高そうなフェラーリを乗り回し、毎日女の子を部屋に呼び寄せるといったいかにも成功した男といった生活を送っている。こんな男を主人公に配置しておきながら、エル・ファニング演じるジョニーの娘が画面に映った瞬間、映像が一気に華やかになる。

 ホテルで顔を合わせる場面、プールでの水中シーン、プールサイドのシーン、イタリアから帰ってきた日のロビーのシーン、キャンプに向かう途中での心情吐露シーンなど挙げていけばキリがない。とにかく、彼女が映るたびにこの映画の瞬間最高得点を叩き出す。美しい空と彼女がいればそれでいい、いや彼女がいなければハリウッドのスターである人生ですらも空虚に思える。最後にジョニーが泣きながら伝えるその気持ちを、観客にそりゃそうだろうなと思わせるほどの説得力をエル・ファニングは持っている。

 男性を主人公にしたにも関わらず、最終的には女性、それも成人していない女の子が最も魅力的に映る作品になってしまうのはやはりソフィア・コッポラの作家性故なのだろうか。