6.2m @ シブカル際

 6.2mは朗読を行う前田エマと、ダンスを行う中村かなえという女性ユニット。選曲を青野研一、朗読のテキストを内沼晋太郎が手がけている。シブカル祭で、PARCOの前に設営されたステージでパフォーマンスを行った。山の手線のSEから始まり、山の手線のSEで終わるパフォーマンスは、大きく4つの朗読のパートに分かれていた。

1.渋谷とパルコ文化に関するWikipediaに書いてあるような文章
2.宮沢賢治クラムボン
3.どこかの教会の紹介文のような文章(おそらくPARCOの隣の教会だと思う)
4.Twitterでの「渋谷」検索で引っかかった文章

 朗読のテキストを見るために、1と3と4ではiPhoneを持っていた(クラムボンについては本を持っていた)。朗読のパフォーマンスで、iPhoneを持っているのは初めて見たけれど、これもPARCOの向かいにあるAppleStoreを意識してのものかもしれない。
 衣装は二人ともセーラー服。その上、中村はスクールバックを頭にかぶった状態で現れ、最初の朗読中はその格好のまま踊り続けた。
 また、朗読とダンスそれぞれのパフォーマンスも特徴的で、朗読を行う前田の声はいわゆる萌え声。にも関わらず、ダンスを行う中村はキレイ系女子で、壇蜜っぽいなと思うほどのセクシーなダンスを行っていた。
 ここまで書いただけでも、記号としてかなりの量が散りばめられており、コンセプチュアルなパフォーマンスであることがわかるだろう。衣装、テキスト、パフォーマンスと多くのものが自己主張をしている中で、音楽だけが変に主張せずに全体に対して安定感をもたらしていた。

 個人的に一番ハッとしたのは、クラムボンの朗読シーン。最初のパートからどこか説明的な文章が続いていく中、カニの兄弟が泡の大きさについて話をする場面で前田の朗読が変化する。小さいカニの兄弟を表現するために、朗読に気持ちが入っていく。それと同時に音楽が変化していく。その瞬間、ライティングは変わっていないにも関わらず、目の前が急に水の中から外を見た時のようなキラキラした感覚になった。聴覚っからの情報の変化で、視覚のイメージに変化があった不思議な感覚だった。
 渋谷のPARCOでパフォーマンスを行うということで、PARCO関連のテキストを準備してあったにも関わらず、一番ハッとしたのがクラムボンだったというのはちょっと申し訳ない気持ちでもある。ただ、パフォーマンス場所や、公演時間が変わればおそらくテキストも音楽も衣装もおそらく変わるだろう。また他の場所で観れることがあれば、見てみたいと思わせるパフォーマンスだった。