Perfume「LEVEL3」

 capsule「FRUITS CLiPPER」から始まった中田ヤスタカのダンス・ミュージックに対するチャレンジの歴史が最高の結果で実を結んだのが、Perfume「LEVEL3」だ。今年、サカナクション「sakanaction」と並び、日本のダンス・ミュージックのアルバムの最高峰をいくアルバムだろう。

 アルバムの構成は前作「JPN」とかなり似たものになっている。オープニングトラックの後で、シングル曲などの既発曲のアルバムミックスが2曲連続で続く。そして、アルバムの中盤にBPMの遅い曲を配置し、アルバムのラスト前にシングルのアルバムミックス曲が来て、そしてアルバムの最後にはラスト曲らしい曲がくる。

 思えば、前作「JPN」もPerfumeというユニットを使ってこれ以上のアルバムを作ることが出来るのか?と思うほど完成度の高いアルバムになっていた。しかし、前前作「トライアングル」にあった、世界最先端のダンス・ミュージックと競い合っていくような曲は少なく、Perfume独自のサウンドとして進化させていったように思う。それと比べると、今作はDavid GuettaやCalvin Harrisなどがシーンを引っ張るEDMのサウンドを意識してエッセンスとして取り入れている。つまり、既に完成形に近づいていた前作のアルバムと同じ構成を使い、世界の最先端のサウンドにチャレンジしている。

 例えば、もはやPefumeの曲である意味があるのか不思議になるほどボーカルが入らない上に、曲の長さも7分を超える、J-Popから遠く離れたM7.Party Makerや、アルバムミックスが行われた中では最も大胆な変更されたM13.Spending all my timeは、そのチャレンジの最も尖った部分だろう。特にSpending all my timeは、曲の頭で使われているシンセの響きを変え、ボーカルではなくベースで引っ張る展開にすることで、EDMの持つ底なしのアゲ感を持たせることに成功している。

 海外に目を向けると、Ellie Goulding「Halcyon Days」というダンス・ミュージック×女性アーティストという似たような作品があるが、こちらはプロデューサーの人選からもわかる通り、良くも悪くも完全にEDMに取り込まれてしまっている。結果的にPerfumeは世界的に見てもかなり独自のポジションに進みつつある。既に今年のカンヌライオンズで行ったパフォーマンスがメディア関係者を中心に世界で話題になっているが、サウンド面でも話題になるのも時間の問題なのではないだろうか。それほどのポテンシャルをこのアルバムを持っている。

※このレビューは、11月4日に行われる文学フリマのカ-7ブースで販売する同人誌PENETRAに収録されます。