Vampire Weekend「Modern Vampires of the City」

音楽には国籍がある。特にロック・ミュージックには。多くのバンドの音は、これはアメリカのバンド、これはイギリスのバンド、これはオーストラリア、これはヨーロッパの他の国ぐらいの分類はできる。このことはそれほど難しいことではなく、TSUTAYAから僅かなCDを借りて聞けば、「耳」がインストールされる。

その一方でどの国のバンドかではなく、ある規模の都市で活動しているバンドによる音というものがある。アメリカのバンドなのかヨーロッパのバンドなのか、それすらも判断が難しい、独特のサウンド。東京に住んでいる者からすれば、どこかの国らしさが全面に出ているよりも聴きやすいものかもしれない。

Vampire Weekendは前作までの2作は明らかに後者の都市のサウンドだった。浮遊感のあるシンセサイザーと、多様なリズムを刻むドラムによって(いい意味で)閉塞的でありながら人工的な華やかさに溢れ、街で行われているパーティーのようだった。

そんな2枚のアルバムから3年経って届けられた新しいアルバム「Modern Vampires of the City」はそういった無邪気な時期が過ぎ、成長していった姿が刻み込まれている。ある都市で生まれた記録としてのアルバムではなく、アメリカを代表するロックバンドとしての自覚を持ったアルバムとして。その大きな変化は一曲目、曲が始まればすぐに分かるだろう。「Obvious Bicycle」は聞きながら広大な大地で演奏するバンドの様子を思い浮かべることが出来る、スケールの大きな曲になっている。伸びやかなベース、柔らかなピアノ。

いわゆるスタジアムロック化ではない。だが、音楽の規模が大きくなっているという珍しい進歩を体感できるアルバムになっている。

Modern Vampires of the City
Modern Vampires of the City
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Vampire Weekend
Xl Recordings (2013-05-14)
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