王になった男

 ここ5年でも「チェイサー」、「ポエトリー アグネスの詩」、「高地戦 THE FRONT LINE」といった「韓国映画」という枠を超えた名作が受賞している、韓国の映画賞「大鐘賞」の最優秀作品賞。2012年にその「大鐘賞」最優秀作品賞を受賞したのが、「王になった男」だ(ちなみにその他のノミネート作品には、「ピエタ」や「トガニ」などの作品も含まれている)。最優秀作品賞以外にも、監督賞、主演男優賞、助演男優賞などの主要な賞も数多く受賞した。

 日本では主演のイ・ビョンホンが全面に押し出されて紹介されているため、どうしても韓流が好きではない人(特に男性)は敬遠しがちだが、こうした賞を受賞していることからわかる通り、より多くの人たちに向けられた作品になっている。

 とはいえ、映画自体は「イ・ビョンホン祭り」であることは否定し難い。暗殺を恐れ誰も信用できなくなっていく王と、その王の影武者になる道化師の二役を一人で演じているためだ。しかし、そんな「祭り」であってもがっかりすることは絶対にない。なぜなら、全く性格の違う二役、それも疑心暗鬼から狂いつつプライドに満ち溢れた王と、道化師から理想的な王へと変化していく姿をそれぞれ演じきっており、改めて彼の実力に驚くからだ。

 脚本は「オールド・ボーイ」の脚本を手掛けたワン・ジョユン。こちらも流石という出来で、王とその周辺を固める人物との関わりあい、そのストーリーが無駄なく不足なく語られている。個人的に気に入っているのは、王の「指」に関する話。あのシーンが伏線になっているのかと驚いてしまった。

 そして「王になった男」は宮廷での話である。男臭い政治の世界も男同士の友情も、美しい上下関係も、全て詰まっている。決してイ・ビョンホンのカッコよさだけで引っ張るような話ではない。どんな人が見ても、韓国映画のクオリティを十分に体感出来るだろう。

※:特典で、イ・ビョンホンのカードをもらいましたが使い道がありません。。。