ダークナイト・ライジング

今上映中のダークナイトライジングについてのレビューです。だいたい800字くらいです。
読み直すと作家主義的に書きすぎていて、もう少し内容について書けるとよかったなとは思います。

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フィルモグラフィは積み上げていくことが出来ても、既に積み上げられたものの意味を書き換えることはなかなか難しい。
クリストファー・ノーラン監督は、誰もが失敗作と評する「バットマン・ビギンズ」がバットマン三部作で重要な作品だったというアイデアを世界中の人々に植え付けるために、
この「ダークナイトライジング」を完成させたのではないだろうか。


最強の敵ジョーカーを倒し、「デント法」と呼ばれる、極悪犯罪者を容易に取り締まれる法律の施行によって平和を取り戻したゴッサム・シティ
そのゴッサム・シティを混乱に陥れるベインとの戦いを描いている。


この映画は誰もが期待した「ダークナイト」の続編ではなく、「ビギンズ」の続編だ。


既に彼の映画の特徴となったIMAXカメラによる最高解像の映像は、今回も各シーンで使われている。
「ビギンズ」で描かれたイニシエーションからのヒーローの誕生という形式を、高級感のある映像で描き直すことで、バットマン誕生の記憶を上書きする。
また、「インセプション」で印象的だった「少ないセリフかつ情緒的なラスト」は今回も健在で、きっちりと伏線を回収し満足度の高い終焉を演出することにも成功している。


しかし、ノーランの取組みが全て上手く行っているわけではない。特に「ダークナイト」に登場したジョーカーが提示した新しい悪の形は、この作品を見る上で最後までノイズで在り続ける。
マッチョや知的テロリストといった典型的な悪役を古きものとし、常識を揺さぶりにかける異物であるだけで最強の悪となることを観客に植え付けてしまったからだ。
今回登場するベインは見るからに強そうなキャラクターでその一点だけでもジョーカー超えを果たしたとは思えない。


「ビギンズ」の重要性は書き換えられた。が、世界中の期待に応えることは出来ていない。
このような位置づけの作品が三部作のラストとして成功しているのか、今の僕にはわからない。

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