ヘルタースケルター レビュー

今とある講座に通っていて、課題として書いた800字制限のレビューです。
(提出してツッコミを受けた点を若干修正しました。)

書いたテーマは映画版のヘルタースケルター

実際相当嫌いな作品ではあるものの、今しか見て面白いタイミングがない。
という点について書きました。

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今から16年後、出版不況の果てにAERAのない世の中が訪れたとき、世のおじさんは何を見て流行の人物を把握するのだろうか。その頃には恐らくAKB48の30番目の姉妹ユニットKSJ48(北千住48の略だが)が誕生しているが、その頃にはAKB48の初期メンバーを誰も思い出せないだろう。

ヘルタースケルターは全身整形を施した女性の、輝かしいトップスターの瞬間から転落までを描いた、岡崎京子原作のマンガの映画化である。

90年代に描かれたマンガを映画化するにあたり、マンガのコマをほぼ忠実に映像化している。ただ、演じる人間だけは90年代のままにするわけにはいかない。ここに2012年、今のコンテキストがふんだんに盛り込まれている。

主人公りりこを演じる沢尻エリカ(ちなみにりりこという名前はさわじ「り」え「り」かの愛称ではない)は、「別に」という発言で物議をかもしてからは、「しっちゃかめっちゃか」な行動を繰り返していたことは記憶に新しい。
りりこから次のスターの座を奪いとるこずえを演じるのは水原希子。誰もが「ノルウェイの森」での驚くべきデビューのイメージが残っていることだろう。
脇を固める俳優も同様に、りりこを追い詰めていく検事役には大森南朋。ドラマ「ハゲタカ」の鷲巣が連想される(奇しくも逆転の配役だが)。
りりこと濡れ場シーンを演じる映画プロデューサー役には哀川翔。言うまでもなくVシネの帝王である。これらの例は枚挙に暇がない。

残念なことに、16年後にはこの映画を見るために必要なこういった背景はほとんど忘れてしまっている。なぜなら、この映画が示しているように若く美しい女性が次々と現れては、古い記憶を押しのけていくからだ。そしてこの映画で印象的に映し出されている雑誌やCMでさえ、懐かしさなしには思い出せないだろう。そう、この映画は今この瞬間に見ることでしか楽しめない作品なのだ。

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