音楽が売れない時代に音楽を売る方法のひとつ。

もう随分前からですが音楽CDが売れない売れないって言われる時代になってます。
今年だと、AKB48投票権付きCDがものすごいたくさん売れたみたいですね。
違法ダウンロードのせいだとか、何だとか言われてますがまあそれも原因のひとつだし
そもそもクソみたいな音楽しか出てないのも原因だとも思います。


ただ、正直販売側に工夫がないからじゃない?というのも正直思います。
映画の前売り券とかも見て思うんだけど、何か買うと景品がつきます!みたいな販促手法は
すごい微妙なものが多いしほんとにファンが欲しいと思うの??というものが多かったり。
そんなしょうもないアイデアばかり繰り返していても販売数が急に伸びるわけではないわけで、
今回はものすごいアイデアに溢れるひとつのプロジェクトである、
イギリスのバンドAshが行ったThe A-Z Seriesを紹介したいと思います。
http://www.ash-official.com/


Ashというバンドは2007年にTwilight Of The Innocentsというアルバムをリリースした後で
もうアルバムを作らないという宣言をして、「え!解散!?」と周囲を驚かせます。
解散をするわけではなく、アルバムというフォーマットで曲を作るのを止め、
違う形態でのリリース活動を開始します。
それが今回のThe A-Z Seriesです。
簡単にいうと、2週間に1曲ずつ「シングル級の新曲」をアルファベットの数、計26回
契約した人にメールで配信するというプロジェクトです。
契約料金は£13/$20と26曲にしては格安な値段設定でした。。


そして契約する前と契約した後つまり曲が配信され始めてからではこのプロジェクトに対する印象が
まるで変わってしまいました。
最初は正直アルバムがバラバラになって届くイメージで、なんかもったいぶられてもなあという印象だったのが
(別にもったいぶっているわけではなく、配信と平行して曲を作っていたのですが)
途中からは次に届く曲はどんな曲だろう?という届くまでのワクワクを楽しむ時間が増え(そして曲に狂喜する)、
終盤はこのプロジェクトの最後をどういった曲たちで終了させていくかの期待と想像で楽しむことができました。
そしてつい先日最終曲There is Hope Againが届き(なんという最後にふさわしいタイトル!)感動のフィナーレを迎えました。


実はさらに驚きがあって、契約時には記載のなかったボーナストラックも合間合間に配信し、
最終的な総配信曲数は38曲になりました。
ボーナストラックが届いたときもものすごい嬉しかったですが、
曲を聞いて「これ正規の配信じゃないの!?」という曲が何曲もあり2度びっくり。
別に配信する曲数を増やしても誰も怒らないですしね。


実はこの一連のプロジェクトは最終的には13曲ずつのCDでThe A-Z Series Vol1,Vol2と言う形でリリースされるのですが
(半分の曲が出た時点でVol1は販売されています)
今回配信された曲をアルバムで聴いても、今回毎回新しい曲をダウンロードして聞いたときの感動は再現出来ないと思います。
2000円だしてテーマを持ったアルバムを買うのと、隔週ごとに新曲が送られてくるのでは感じ方がまるで違います。
どちらもそれぞれいい面があるとは思いますが、
Ashのこのプロジェクトは音楽を買うという行為から得られる感情を新しくデザインしたなぁと思いました。
今後、どういった曲の販売方法を取るのかわかりませんがAshの次の配信でもお金を払いたくなります。


正直、26曲もいろいろな方向性でシングル級の曲を書き続けられるほど才能が豊かな人たちばかりではないので
誰しもが真似出来るようなプロジェクトでないことはよくわかっています。
またレーベルと契約していればその契約が切れるまでは主導権がないのもわかります。
ただ、自分の好きなバンドのアルバム発売日が決定し、その日まですごいワクワクする気持ちを
約1年間ずっと維持させたこのプロジェクトは本当にすごいアイデアだなと思います。
日本だったら、くるりがやったらすっごい曲がたくさん出てくるような気がする。
面白いアイデアを実践してるのがレーベルと契約をしなかったRadioheadとかNine Inch Nailsとか
アーティスト側から出てきたものばかりというのが悲しいところです。


結局、ストラップとかそういう景品よりも好きなバンドが作った曲が一番だし、
やっぱり新しい曲が聴けるっていうワクワク感はいつまでもあるんだなあということを再確認しました。
そして、直球で言えば音楽を買うという行為で今までと違う体験が出来るなら全然お金出すよ!ってことです。